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妹「野球しようよ」 元スレ 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 17 10 00.73 ID K/S/Fyi30 俺「昨日の試合すごかったな」 妹「ホームランに始まってホームランに終わるって感じだったよね」 俺「それは、言っちゃダメ」 妹「なんで?」 俺「ダメったらダメ」 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 17 14 00.93 ID K/S/Fyi30 俺「新庄と清原が一緒に解説したらしい」 妹「色々とハジけてたね」 俺「あれくらいせんと視聴率稼げないんだろうな」 妹「野球は野球場でやるものなのにね」 俺「そうだな」 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 17 22 19.93 ID K/S/Fyi30 俺「盗塁ってかっこいいよな」 妹「そうだね」 俺「あの投手との駆け引きがなんともいえないんだよなぁ」 妹「それもそうだけど、レフト前ヒットで一塁ランナーが三塁まで進む走塁が好きだな」 俺「あー」 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 17 27 13.82 ID K/S/Fyi30 俺「このプロ野球チップスカード、いつのだろうな?」 妹「2000年くらいじゃない?」 俺「なんでわかるのさ?」 妹「ソックスの履き方で」 俺「時代を感じるよなぁ」 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 17 35 25.51 ID K/S/Fyi30 姉「ねぇ」 俺「ん?」 姉「ギダって何?」 俺「ギダ? あぁ、犠打ね。犠牲バントの事だよ」 姉「へぇ」 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 17 37 57.16 ID K/S/Fyi30 俺「ドラッグバント、セーフティーバント、プッシュバント。一口にバントと言っても色々なやり方があるんだよ」 姉「へー、じゃあこのパソコンは?」 俺「ブロードバンド」 姉「……」ニヤニヤ 俺「言わせといてそのドヤ顔やめてくれ……」 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 17 42 26.33 ID K/S/Fyi30 俺「今年もドラフト終わったなー」 姉「ドラフトってアレでしょ? 車の」 俺「そりゃドリフト」 姉「8時だよ」 俺「そりゃドリフ」 姉「世界三台珍味」 俺「ひょっとしてワザとやってねぇか?」 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 17 48 19.58 ID K/S/Fyi30 姉「あたし野球なんかわかんないもん」 俺「そうかい」 姉「盗んだり刺したり殺したりするスポーツって事くらいしか知らないわ」 俺「それ何のネタだっけ」 姉「あん?」 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 02 29.48 ID K/S/Fyi30 俺「引退したらムービースターになるって言った選手が居るらしい」 妹「ムービースターというよりエンターテイナーね」 俺「でもカッコイイんだよなぁ」 妹「だね」 俺「だなぁ」 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 08 57.59 ID K/S/Fyi30 ブン ブン 妹「はぁ、はぁ」 ブン ブン 俺「素振りですか」 妹「高校になって対戦投手のレベルが急に上がった気がするの」 俺「中には卒業したらプロに入るやつも居るしな」 妹「あたし、負けたくないの」 ブン ブン 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 14 54.73 ID K/S/Fyi30 俺「左打席の時な、右肩の開きが早いからなるべく最後まで肩は閉じてろ」 妹「うん」 俺「あと、右打席の時は右肘の使い方を意識した方がいい、その方がヘッドが早く出るからな」 妹「うん、こんな感じ?」 俺「もっとこう。肘をこうやって押し出すカンジでな」 姉「いつも言おうと思ってたけど、くっつきすぎでしょアンタ達。スキンシップにも程ってもんが」 妹「そう?」 姉「そうよ、あんたも一応女の子なんだからね」 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 18 34.62 ID K/S/Fyi30 俺「ん? ひょっとして背伸びた?」 妹「えへへ、気づいた?」 俺「う~む……」 妹「?」 俺「ここは成長ナシ、か」 妹「お兄ちゃん!」 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 24 21.05 ID K/S/Fyi30 姉「で、どうなのよ。社会人になった感想は」 俺「ん~……、意外とこんなものなのかなって」 姉「あん?」 俺「得意先行って頭下げて、会社帰って頭下げて、熱くなる事もなく一日が終わって、気がついたらヘトヘトだよ」 姉「それがサラリーマンって生き物よ」 俺「さいでっか」 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 26 05.04 ID K/S/Fyi30 俺「なんか、こう。もっと熱くなれるものがあればとは思うけど」 姉「そんなアンタに社会人の先輩から一つ素敵なアドバイスをしてあげるわ」 俺「なんだよ」 姉「仕事してる時はあくまで違う自分で居なさい、その方が楽だから」 俺「そんなものかねぇ……」 姉「皆そうやって生きてるのよ」 俺「生き難い世の中だこって」 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 30 01.09 ID K/S/Fyi30 姉「あたしだって好き好んで銀行員なんかやってないわよ。出勤すりゃお局様からは小言攻撃、残業だって多いし、しんどい事の方が多いわよ。でも生きていくためにはしょうがないのよ」 俺「しょうがない、ね」 姉「毎日毎日電卓叩いてお札数えて、たまーに’あたしはそんな事の為に生まれてきたんじゃない!’って思うけどね。でもどこかで妥協しなきゃ仕事なんかやってらんないわよ」 俺「妥協、ね」 姉「まー、あんたにもそのうちわかるわよ」 俺「さよか」 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 33 07.16 ID K/S/Fyi30 妹「あ、お兄ちゃん。おはよー」 俺「はよー」 妹「あのね、今日って早く帰ってくる?」 俺「たぶんな、今日は定時で帰れるはず」 妹「じゃあ……またスイング見てくれない? 試合も近いしさ」 俺「おう、いいぞ」 妹「やったあ! じゃあ待ってるね!」 俺「おう。それじゃあイッテキマス」 妹「いってらっしゃ~い!」 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 35 54.08 ID K/S/Fyi30 俺「ちわっす」 先輩「おー、どうよ俺くん。営業の仕事はもう慣れた?」 俺「いや、まだまだですよ」 先輩「ははは。うちの会社これでもマシな方なのに辞めていく人が多くて困ってたんだよねぇ。俺くんが来てくれて助かったよ。まったく最近の若いヤツは根性が足りないというか──」 俺「はぁ……」 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 38 09.21 ID K/S/Fyi30 俺「後は日報書いて終わり、と」 先輩「俺くん今日もう終わり?」 俺「そうっす」 先輩「いいねぇいいねぇ。じゃあこの後ちょっと一杯やってく?」 俺「今日はちょっと……」 先輩「ん? なんかあるの?」 俺「あ、いや。ご一緒します」 先輩「ははは、だよねぇ。ここじゃ先輩のお誘いは断らないのが長くやってくコツだからね? 覚えておくといいよ?」 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 41 48.27 ID K/S/Fyi30 先輩「おねーさん、生ビール二つね」 店員「ありやとやしたー」 先輩「はい、カンパーイ。おつかれさまー」 俺「お疲れ様です」 先輩「ぷはー! ったくさー、毎日毎日やってらんないよなぁ。あ、そういえば今日の部長なんか機嫌悪かったでしょ? あれって昨日奥さんにキャバクラ通いバレたらしいよ、あとね係長が──」 俺「はぁ……、そうなんですか」 俺「(6時、か)」 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 43 57.00 ID K/S/Fyi30 先輩「そういえば俺くんって昔野球やってたんでしょ?」 俺「まぁ、一応」 先輩「やっぱり~? なんかそんな気してたんだよね。モサいっていうか、いかにも野球部ってカンジじゃん?」 俺「そっすか」 先輩「ははは。あ、別に悪口とかじゃないから落ち込まないでね? 野球は昔から興味ないんだよねぇ、野球なんかオッサンがスポーツ新聞で読むもんでしょ?」 俺「まぁ、そっすね」 先輩「それにさー、見たいドラマが始まるのが遅くなるのが許せないっていうか、まぁそんあカンジなんだよねー」 俺「そうですか」 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 51 02.92 ID K/S/Fyi30 先輩「くそー、しゃかいがぜんぶわるいんだー」 俺「ちょっと先輩大丈夫っすか? 飲みすぎですよ」 先輩「らいじょーぶ、らいじょーぶらって」 俺「タクシー拾いますから、ちょっと座っててください」 先輩「ひゃーい」 俺「もう11時か……」 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 52 27.82 ID K/S/Fyi30 俺「ただいま~」 母「おかえりなさい、随分遅かったのね」 俺「妹は?」 母「もう寝ちゃったよ、明日も早いんだってさ」 俺「そっか……」 母「何か食べる?」 俺「いや、食べてきたから今日はもう寝るよ」 母「そう」 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 18 54 19.67 ID K/S/Fyi30 俺「はぁ」 俺「寝て起きたら明日も会社か」 俺「社会人は大変だなぁ」 俺「妥協……、ね」 俺「はぁ、寝よ」 俺「おやすみ……」 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 05 54.18 ID K/S/Fyi30 俺「そういえば、そろそろ夏の地方予選か」 妹「うん」 俺「高校の公式戦じゃ、お前はベンチ入りできないんだよな」 妹「……うん」 俺「応援行くよ、今度の日曜だっけ?」 妹「○×野球場」 俺「わかったよ」 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 12 07.57 ID K/S/Fyi30 俺「そうか、もうそんな季節か……」 父「そうだなぁ、今年も甲子園の季節がやってくるな」 俺「とーさん。居たのか」 父「ふははははは、とーさんは時と場所を選ばずに参上する正義の味方なのだ!」 俺「正義の味方て」 父「はっはっは。まぁ、それは置いといて、だ」 俺「あん?」 父「仕事も良いがたまには生き抜きも必要だぞ? 最近お前の帰りが遅いもんでな、妹がすこぶる不機嫌でとーさんは正直いってツラい!」 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 16 39.70 ID K/S/Fyi30 俺「なぁ、とーさん」 父「うむ。何だね明智少年、ついに白状する気になったか? カツ丼食べるか?」 俺「いらん」 父「いらんって、とーさんハッキリ言われると傷ついちゃうぞ、ぷんぷん」 俺「可愛くないからそれ」 父「そうか」 俺「そうだよ」 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 23 58.94 ID K/S/Fyi30 俺「社会人って結構シンドいんだな」 父「ん」 俺「まだ野球の練習のシンドさの方がいくらかマシだったよ」 父「そうか」 俺「とーさんって、結構スゴイ大人なんだなって思った。ちゃんと家族養ってさ、毎日愚痴も言わずに働いてさ」 父「はっはっは。何だ何だ、褒めても何も出ないぞ?」 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 33 00.32 ID K/S/Fyi30 俺「けっこう俺もツラいんだわ。色々と」 父「だろうな、痩せたもんなお前」 俺「妹からスリムになったって言われたよ」 父「はっはっは、そうかそうか」 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 36 00.99 ID K/S/Fyi30 父「前にお前を月見草に例えた事があったな」 俺「そうだな」 父「知ってるか? 月見草ってのはな、冬は雪の下でじっと絶えて、夏の日照りの中でも枯れないんだぞ?」 俺「……?」 父「しぶとさがお前のウリだろう? 追い込まれてもファールで粘って粘って良いボールをはじき返すんだ」 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 40 54.89 ID K/S/Fyi30 父「あの夏のお前はどこに行った? 怪我して全部忘れてしまったか?」 俺「そっか、……月見草か」 父「ん」 俺「なんか元気でたよ。ありがと、とーさん」 父「そうか、元気でたか」 俺「うん、ありがとう」 父「なに、気にするな。それにこんな時くらい父親らしくありたいからな、はっはっは」 俺「一言余計だよ」 父「気にするな明智少年、はっはっは」 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 49 47.62 ID K/S/Fyi30 俺「今年で引退する監督居るらしい」 妹「最後は敵味方関係なく胴上げされてたね」 俺「それが野球の良さだよ」 妹「ちょっとウルウルしちゃった」 俺「ドラマだよなぁ」 妹「だねぇ」 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 55 49.68 ID K/S/Fyi30 TV『今シーズン7勝に終わった○○選手はアメリカで~~』 俺「お~、この選手もついにメス入れるのか」 姉「何を入れるって?」 俺「メスだよ」 姉「この人オスでしょ?」 俺「ヒジにはメスを入れるんだよ」 姉「それって、つまりふたn」 俺「まてまてまて、何をどう聞いたらそうなるんだ」 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 19 58 42.49 ID K/S/Fyi30 姉「改めて野球について勉強してみようと思うの」 俺「急に何だよ」 姉「というワケで教えなさいよ」 俺「まぁ、いいけど」 姉「今度のデートが野球観戦なのよ」 俺「あ、そ」 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 20 00 51.56 ID K/S/Fyi30 姉「なるほど、その’せりーぐ’と’ぱりーぐ’っていうのに分かれてるのね」 俺「そうそう」 姉「ふーん、サッカーと一緒なのね」 俺「あん?」 姉「どっちがJ2なの?」 俺「あん?」 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 20 09 32.56 ID K/S/Fyi30 俺「というわけで、妹の試合を見に来ました」 妹「あ、お兄ちゃん。来てくれたんだ!」 俺「おう、試合13時からだろ?」 妹「うん」 俺「先にスタンド行ってるからな、しっかり応援しような」 妹「……うん」 俺「なんだなんだ、元気ないな」 妹「やっぱり、試合に出れないのは、ちょっと悔しいっていうか……」 俺「うむ、その分だけ試合に出てる選手を応援しようじゃないか。な?」 妹「うん」 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 20 38 12.68 ID K/S/Fyi30 ワーワー 俺「う~ん、高校野球って感じの雰囲気だなぁ。懐かしい」 俺「ついこの間まで俺もそっち側に居たんだよなぁ」 俺「野球、か……うん。いいもんだよな」 俺「にしても、随分部員が少ないんだなぁ」 おじさん「あんたも△△高校の応援かな?」 俺「あ、そうです」 おじさん「そうかいそうかい、最近まで△△高校も強かったんだがここ三・四年でサッパリ弱くなっちまってね」 俺「そうなんですか?」 おじさん「なんでも廃部が検討されてるとかって聞くね、まぁそんな事にはならないとは思うんだけどね?」 俺「廃部って……」 おじさん「あ、ごめんね変な事言って。これあくまで噂だからさ」 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 20 46 58.04 ID K/S/Fyi30 審判「プレイボール!」 俺「お、始まりましたね」 おじさん「そうだねぇ」 妹「がんばれ~!」 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 20 50 06.52 ID K/S/Fyi30 審判「フォアボール!」 俺「また四球か。ちょっと球数も多いし流れが悪いなぁ」 おじさん「さっきの外野のエラーから調子崩したみたいだね、あの投手」 俺「エラーは良いんだけど、その後ですよ。さっき誰もカバーに行ってなかったでしょ?」 おじさん「ほう?」 俺「例えばピッチャーが一塁牽制した時はセカンドとライトがダッシュでカバーに入るとか、ショートゴロだったらキャッチャーはファーストのバックアップに入るとか、そんな基本的な事ができてない気がしますね」 おじさん「う~ん、よく見てるね」 俺「あ、すみません。クセみたいなもんで」 おじさん「良い目だ」 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 20 58 42.89 ID K/S/Fyi30 カキーン おじさん「おぉ、よく打ったね今のボール」 俺「そうですね、ちょっと泳がされましたけど。気持ちでもっていったって感じのヒットでしたね」 おじさん「さあ、反撃開始だよ」 俺「この試合初めて出したランナーですからね、ノーアウトだし攻めていきたいですね」 おじさん「君だったら、次の打者にどんなサインを送るんだろうね?」 俺「ヒッティングですね」 おじさん「ほう? 定石のバントではなくて?」 俺「まだ回が若いですからね、ノせてあげると高校生くらいだと試合中に爆発する事もあるんですよ」 おじさん「爆発、ね」 俺「毎年甲子園に出るようなチームには一人くらい居るでしょ? 地方大会の打率が五割とか六割とか残す選手が、そういう事ですよ」 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 06 28.77 ID K/S/Fyi30 コツン おじさん「バントだったね」 俺「ま、ここは手堅くという事でしょうね」 おじさん「一死献上で得点圏、それも良い作戦と思うけどね?」 俺「投手ってのは、アウトを取ってる限り気持ちよく投げられるんですよ」 おじさん「ほう?」 俺「バントってのは投げる側からすると楽なんです、アウト一つもらえるわけですからね」 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 08 59.95 ID K/S/Fyi30 おじさん「ふむふむ」 俺「打たれるって事ほど投手にとって気持ち悪い事はない、ましてや今日初めて打たれた安打だ。ここでバントはむしろ相手に立ち直る機会を与えているようなものです、多少無理してもヒッティングですよここは」 おじさん「う~ん、そうかなあ」 審判「ットラックアウト! チェンジ!」 おじさん「あらま、この回も0点か」 俺「ま、ここで話してても野球をやるのは選手なんですけどね」 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 13 15.32 ID K/S/Fyi30 審判「ゲームセット!」 俺「負けちゃいましたね」 おじさん「今年も初戦敗退かぁ、高校野球は厳しいなぁ」 俺「惜しかったですよ」 おじさん「実はね」 俺「?」 おじさん「この高校三年前から監督が不在なんだよ」 俺「はぁ」 おじさん「野球を教えられる人が居なくてね、今は新任の人が顧問をやってるらしいんだが」 俺「そうなんですか」 おじさん「……ま、次も応援に来てあげてね」 俺「はい、そうします」 おじさん「それじゃあ、また」 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 17 39.26 ID K/S/Fyi30 俺「よう、惜しかったな」 妹「……うん」 俺「その涙があれば立ち直れるさ」 妹「お兄ちゃん、あのね」 俺「うん?」 妹「あたし、何もできないのが……」 妹「やっぱり……、くやしいよ……」 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 19 50.29 ID K/S/Fyi30 妹「同じ野球部員なのに、ベンチにも入れなくて、スタンドから応援してるしかなくて」 妹「あたし、ずっと……ずっとこんな……」 俺「妹……」 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 27 10.06 ID K/S/Fyi30 俺「それでもその道を選んだのはお前だろう」 俺「そこでやれるだけの事をやるしかないよ」 俺「お前はお前だ」 俺「とか、言えるわけないしなぁ……あの時何て言葉をかけたらよかったんだよ」 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 32 48.58 ID K/S/Fyi30 ピ TV『H●K杯フィギアスケート』 ピ TV『一番面白くない芸能人はダレだ?!』 ピ TV『この件に対し容疑者は「後悔はしていない、だが今は反省しいてる」と述べており~』 ブチン 妹「あー、今日移動日か」 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 38 46.08 ID K/S/Fyi30 妹「試合には出られないし、部員はやる気ないし」 妹「野球……楽しくないなぁ」 妹「あ、学校いかなきゃ」 妹「こんな時に期末テストとか嫌になっちゃうなぁ……」 妹「いってきまーす」 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 42 51.17 ID K/S/Fyi30 母「あら? 妹ったらお弁当忘れてるわ」 俺「あいつが忘れ物とか珍しいこともあるもんだな」 母「ちょっと届けてくれない? あなた今日お仕事お休みでしょ?」 俺「あぁ、いいよ」 母「それと」 俺「?」 母「これ、差し入れにスポーツドリンクとバナナとプロテインを人数分」 俺「って、こんなに持っていけるか!」 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 48 10.00 ID K/S/Fyi30 妹「おはよー」 クラスメイト「おはよー」 妹「テスト嫌だねー、勉強してきた?」 クラスメイト「ぜんっぜん」 妹「あはは、だと思った」 先生「い……妹ちゃん! 聞いて! 大変っ! 大変なの!」 妹「ちょ、ちょっと先生、どうしたの?!」 先生「教頭が、ハゲてて……! あ、そうじゃなくて……」 妹「先生落ち着いて。深呼吸、ハイ吸って~、吐いて~」 先生「ヒ・ヒ・フゥ~、ヒ・ヒ・フゥ~」 妹「それ何か違う気が……」 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 51 05.73 ID K/S/Fyi30 妹「それで先生、どうしたの?」 先生「朝の会議でね、教頭先生から言われたの。野球部は廃部だって」 妹「なあんだ、廃部かぁ~」 先生「うん」 妹「え?」 妹「廃部?!」 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 55 05.91 ID K/S/Fyi30 妹「ちょっと! 廃部ってどういう事ですか」 教頭「何だね君は」 妹「野球部の者なんですけど」 教頭「ふん、あぁあのクズの野球部か」 妹「なんですって?!」 先生「ちょ、ちょっと妹ちゃん落ち着いて……」 妹「先生はこんな事言われて悔しくないんですか!」 先生「それはそうだけど……」 教頭「まぁこれは決まった事だからな」 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 21 59 13.48 ID K/S/Fyi30 教頭「あのね、学校だって慈善事業やってるんじゃないんだよ? 専用野球場の維持だけでも年数百万円かかるんだからね? おまけに弱い。勝てば知名度もあがるが、こんなに弱いんじゃ話にならない」 妹「それは……」 教頭「この間の地方予選も一回戦で負けたって話じゃないか、しかも無名の公立高校に」 妹「う……」 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 01 15.02 ID K/S/Fyi30 教頭「うちみたいな私立が公立高校に負けるとはとんだ笑い話だよ、よくも学校の名前に泥を塗ってくれたよ」 先生「でも、子供達は悪くありません……」 教頭「先生は黙っていてください」 先生「はうぅ……」 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 06 45.61 ID K/S/Fyi30 妹「そんな……廃部だなんて……」 教頭「まぁ私も鬼ではありません、結果さえ出してくれれば良いのですよ」 先生「け、結果とは?」 教頭「今年中にそれらしい結果を残さない場合は、廃部という事です。大きい大会で上位に入るとかね、まぁ無理だと思いますが、ははは」 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 09 52.22 ID K/S/Fyi30 妹「三年生が抜けた今に通達するなんて……やり方が汚いですね」 先生「ごめんね、わたしの立場が弱くて……それに野球もよくわかんないのに野球部の顧問だなんて……ごめんね」 妹「謝らないでよ先生、大丈夫。勝てばいいんだよ」 先生「でも……だめだったら……」 妹「マイナス思考発言禁止!」 先生「はうぅ……」 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 19 20.93 ID K/S/Fyi30 先生「どうしようどうしよう、先生どうしたらいいの?」 妹「先生が落ち着かないでどうするんですか!」 先生「ごめんね……でも先生野球の事はよくわからないし……」 妹「でかい大会って言ったら一番近いのは秋季大会か……あと二ヶ月しかないじゃない」 先生「で、でも二ヶ月あれば」 妹「(二ヶ月で三年生の抜けたチームで勝ち上がる……?)」 妹「(厳しい……うちはタダでさえ選手層が薄いのに……)」 妹「(ああ……こんな時あたしが試合に出場できれば……!)」 俺「お、居た居た。おーい妹、弁当忘れてたぞー」 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 23 52.64 ID K/S/Fyi30 妹「お兄ちゃん?! どうして学校に?」 俺「あん? お前が弁当忘れてたからだよ」 妹「あ……、ありがと」 俺「こんにちは、顧問の先生ですよね? こいつの兄の俺です」 先生「こ、こんにちは」 俺「それからこれ、差し入れにスポーツドリンクとバナナとプロテインを人数分です。よかったらどうぞ」 先生「あ、ありがとうございます……?」 俺「?」 先生「ひ、ひょっとして、俺くん?」 俺「あん?」 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 30 49.51 ID K/S/Fyi30 先生「覚えてない? ほら、高校の時一緒のクラスだった……」 俺「ひょっとして、委員長?」 先生「わぁ、覚えててくれたんだ」 俺「お前、学校の先生してたのか。はっはっは、久しぶりだなぁ」 先生「うん、今年採用されたんだ」 俺「そうかそうか。じゃ、がんばれよ」 先生「も、もう帰っちゃうの?」 俺「弁当届けにきただけだし、用事はもう済んだよ。それよりお前ら時間は良いのか?」 キーンコーンカーンコーン 先生・妹「あ」 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 36 51.93 ID K/S/Fyi30 Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr 俺「ん、誰だろ?」 先輩『おい! お前今どこに居る?』 俺「△△高校ですけど」 先輩『△△高校? まぁいい、今すぐ会社こい』 俺「え? でも今日休みのはずじゃ」 先輩『取引先から仕様変更の通達が来たんだよ、対応に追われてるからお前手伝え』 俺「でもそれ先輩の仕事じゃ」 先輩『つべこべ言うな。この前の飲み、オゴっただろ?』 俺「はぁ……わかりました」 俺「この前のタクシー代俺出したのにな……」 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 49 55.82 ID K/S/Fyi30 俺「ったく、自分の仕事くらい自分で捌けよな」 おじさん「おや? また会いましたね」 俺「この間のおじさんじゃないですか、こんにちは」 おじさん「ほっほ、いい日和だね。夏というのに蒸し暑くなく、日照りが心地良い」 俺「そうですね。お散歩ですか?」 おじさん「ん~、そうだね。家は近いよ」 俺「そうなんですか、この辺りはいいですね緑が多くて。おっと、俺仕事行かなきゃいけないんでした」 おじさん「急ぎかね?」 俺「けっこう急ぎみたいですね」 おじさん「ほっほ、そうかね。君とは一度じっくり話をしてみたいと思ってたんだよ。また会えるかな?」 俺「あ、じゃあこれ俺の携帯番号なんで、いつでも掛けてください」 おじさん「あいわかった」 俺「それじゃあ、そろそろ行きますね」 100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 54 24.94 ID K/S/Fyi30 先輩「お前来るの遅いよ!」 俺「すいませんっす」 先輩「これ百ページ今から目を通して資料作り直せ、明日までな」 俺「明日って、そんな急に」 先輩「あん? できなきゃ俺かお前がクビなんだよ、わかるか? わかるよな」 俺「元々俺の仕事じゃないんですが……」 先輩「何か言ったか? 俺はちょっと休憩するけどお前ちゃんと進めとけよ」 俺「はぁ……」 101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 22 58 50.17 ID K/S/Fyi30 俺「お……終わったあぁ……」 俺「もう終電無いな……」 俺「先輩、先輩。起きてください」 先輩「……ン、終わった?」 俺「終わりましたよ、メールに添付しましたからチェックしてください」 先輩「いやー、サンキューサンキュー。優秀な後輩が居て助かるわマジで、じゃあ帰るからカギよろしくね~ん」 俺「はぁ……」 102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 02 47.93 ID K/S/Fyi30 俺「ただいま~」 姉「ねぇ、ちょっとアンタ。妹に何かした?」 俺「あん?」 姉「今日帰ってくるなり機嫌悪くて、とーさん縮こまっちゃってるの。何か知らない?」 俺「さあ? 知らないけど」 姉「ウソついてないでしょうね?」 俺「ウソついてどうするんだよ」 姉「……それもそうね」 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 09 38.65 ID K/S/Fyi30 妹「ねぇお兄ちゃん」 俺「あん?」 妹「あの……その……」 妹「やっぱり何でもない!」 父「……ガーン」 俺「いや。ショック受けるポイントおかしいだろ、とーさん」 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 11 49.65 ID K/S/Fyi30 父「息子よ……」 俺「何だよ」 父「娘という生き物はかくも難しいものなのか……」 俺「幾つになっても俺もねーちゃんも妹も、とーさんの子供だよ」 父「そうか」 俺「そうだよ」 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 15 31.61 ID K/S/Fyi30 俺「でも確かにちょっと変だったな妹」 父「何か知らないか?」 俺「う~ん、そういわれても本当に何も知らないからなあ」 父「お月様かな」 俺「親に言われて嫌な台詞ナンバー1だなそれ」 父「ガーン」 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 23 27.84 ID K/S/Fyi30 俺「(どうしてこうなった)」 女A「ねぇ~俺さんってどんな女性が好みなの?」 先輩「あ~、だめだめ。こいつ童貞だから」 女B「ギャハハ、マジ? うける~」 先輩「それよりさ~、君のそのネックレスかわいいね、どこの?」 俺「はぁ……、なんで俺こんなとこ居るんだろ」 108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 25 23.89 ID K/S/Fyi30 先輩『お前、今夜空いてるか?』 俺『え?』 先輩『合コンだよ、急に男が一人来れないってんでお前を誘ってるんだ、ありがたく思えよ? ちなみに相手は現役の先生だから』 俺『俺は別に、』 先輩『来るよな?』 俺『はい……』 先輩『よしよし、素直でよろしい』 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 29 01.88 ID K/S/Fyi30 先生「すみませ~ん、後れました」 女A「おそいよ~」 先生「ごめんなさい、ちょっと練習が……。俺くん?」 俺「委員長……」 先生「奇遇だね、こんなところで会うなんて」 先輩「ひゅー、美人じゃん。何々? 二人は知り合いなわけ?」 先生「高校の時のクラスメイトなんです」 先輩「へ~、そうなんだ」 111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 31 38.68 ID K/S/Fyi30 ヒソヒソ 先生「ねぇ、二人で抜け出さない?」 俺「え?」 先生「どうせ断れなくて仕方なく参加したんでしょ? わたしも同じだから」 俺「じゃあ、……うん」 先生「えへ、じゃあ決まりね」 ヒソヒソ 113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 37 16.18 ID K/S/Fyi30 先生「それにしてもびっくりしたなぁ、妹ちゃんのお兄さんが俺くんだったなんて。苗字が同じだったからもしやとは思ってたけど」 俺「俺こそびっくりだよ。まさか委員長が先生になってるなんてな、まぁ昔から言ってたよな’先生になりたい’って。よかったじゃないか、夢が叶って」 先生「うん……そうなんだけどね」 俺「元気ないな、どうした?」 先生「妹ちゃんから、何か聞いてない?」 俺「いんや、何も」 先生「そう……、実はね──」 115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 43 30.13 ID K/S/Fyi30 先生「──」 俺「そんな事になってたのか」 先生「わたしもうどうしたらいいかわからなくて……、今日もさっきまで練習してたんだけどね」 俺「こんな時、何て言っていいかわからんが。その、元気だせよ。委員長がそんなんだったら部員の皆も安心できないだろ?」 先生「……うん」 俺「それにしても廃部、か。だからあいつ──」 117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 51 31.77 ID K/S/Fyi30 先生「妹ちゃん、一人で責任感じちゃってね。なんとかチームを纏めようとしてくれてるんだけど、なかなか上手くいかないのよ……」 俺「う~ん、なるほどね。そういう事だったのか」 先生「俺くん……」 俺「悪いが仕事があるんでね、コーチの引き受けは難しいな」 先生「……だよね」 俺「しかし」 先生「え」 俺「休日なら暇してるからな、その時くらいなら引き受けてもかまわん」 先生「俺くん!」 俺「ちょ、抱きつくなって。く、苦しい……」 118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/06(金) 23 57 57.17 ID K/S/Fyi30 先生「というわけで今日から野球を教えてくれる事になった俺さんです」 俺「ども、よろしく」 部員「ちゃーっす」 妹「お、お兄ちゃん……なんで?」 俺「あー、今日から君らに野球を教える事になりました俺です。昔ちょっと野球やってたんでそこらの人よりは詳しいと思います」 俺「とりあえず今日は皆の動きを見せてもらおうと思います、怪我しない範囲で頑張りましょう」 部員「ほんとに大丈夫なの、この人……?」ヒソヒソ 少年「……」 123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 04 10.45 ID 7TQhvk2x0 部員「ノックいくぞー!」 カキーン 部員「次セカンドゲッツー!」 カキーン 部員「ライトいくぞー!」 カキーン 俺「う~ん、この練習風景。懐かしいなぁ」 124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 06 25.64 ID 7TQhvk2x0 先生「俺くん、お茶どうぞ」 俺「ありがとございます、先生」 先生「俺くんに先生って呼ばれるの変な感じ」 俺「ここで委員長って呼ぶほうがおかしくないか?」 先生「うふ、それもそうね」 125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 10 12.84 ID 7TQhvk2x0 部員A「なぁ」 部員B「何だよ」 部員A「あの人野球やれる様に見える?」 部員B「いんや、そうは見えないけど……」 部員A「ちょっと試してみようか」 部員B「試すって何を」 部員A「流れ弾に見せかけて俺さんに向かって全力投球」 部員B「ちょ、ちょっと。辞めようよそんな事」 部員A「あぁああああ! 手が滑ったあぁぁあああ!」 126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 13 13.65 ID 7TQhvk2x0 ビュン! 俺「っ」 俺「委員長! 危ない!」 先生「え?」 ドサッ 先生「え? え? 俺くん? なんでわたしの上に、え? 襲われてるわたし?」 俺「ボケてる場合か、怪我は無いか? 頭とか打ってない?」 先生「え、あ。うん……」 127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 15 53.57 ID 7TQhvk2x0 部員B「あわわわわ、た、大変だぁ」 部員A「あら~……、違うトコ行っちゃった」 少年「おいお前、くだらねぇ事してんじゃねぇぞ」 部員B「し、し~らないっと」 部員A「な、なんだよ少年」 少年「……ち」 部員A「舌打ちされた……、俺先輩なのに……」 128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 19 01.27 ID 7TQhvk2x0 俺「おい!」 部員A「は、はい!」 俺「さっき投げたのお前か?」 部員A「はい! 自分です!」 俺「そうか……お前か……」 部員A「(な、殴られる……)」ゴクリ 129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 20 44.11 ID 7TQhvk2x0 俺「良い肩してるなお前! ちょっとびっくりしたぞ」 部員A「え?」 俺「どこだポジション? センターか? それともキャッチャーか?」 部員A「えっと、センターです」 俺「そうかそうか、その肩があればかなりの武器になる。いやー、いいもん見せてもらったよ」 部員A「はは、……褒められちゃった」 130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 23 10.66 ID 7TQhvk2x0 部員B「なんだか凄い事になってるなぁ」 妹「……」 部員B「ひ?!」 妹「なんでおにいちゃん先生といちゃいちゃしてるの……ゆるせない……」 部員B「こっちも凄い事になってる……」 132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 33 54.33 ID 7TQhvk2x0 俺「それじゃあ今日はこれくらいにしておこう、各自ストレッチを怠らないようにな」 部員「したっ!」 俺「お疲れ様」 先生「チームの印象はどうですか、カントク」 俺「監督は辞めてくれよ。どうもこうも、バランスが悪いってのが印象かな」 先生「バランス?」 俺「まぁ、磨けば光りそうなのがチラホラ居たよ。逆に言えばどうやら指導者次第でこのチームは化けそうだ」 先生「うふ、期待していいのね?」 俺「最善は尽くすよ」 133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 00 37 02.52 ID 7TQhvk2x0 俺「それじゃあ、俺もそろそろ帰るよ」 先生「わたしは、明日の小テスト作ってから帰るね」 俺「大変だな、先生」 先生「じゃあね、俺くん」 俺「うん、またな」 先生「俺くんかぁ……」 先生「ちょっと会わない間に大人の男になってたなぁ……」 先生「俺くん、かぁ……」 先生「はっ、何考えてるのわたし」 先生「俺くん、かぁ……彼女とか居るのかな」 137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 01 03 58.07 ID 7TQhvk2x0 先生「さ~て、ちゃっちゃとテスト作って帰りますか」 おじさん「おや、居残りかね」 先生「お父様」 おじさん「こらこら、学校でお父様と呼ぶのは辞めなさい」 先生「すみません、理事長」 おじさん「野球部の監督の事なんだが」 先生「はい?」 おじさん「ふさわしい人材が見つかったから、明日紹介しようと思う」 先生「あ、その件はもう……」 おじさん「うん? 何かね?」 先生「いえ、何でもないです」 おじさん「ふふ、楽しみにしてなさい」 138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 01 06 11.18 ID 7TQhvk2x0 妹「……」 俺「なんだよ」 妹「どうしてお兄ちゃんがコーチやってるの?」 俺「あぁ、委員長に頼まれてな」 妹「委員長って先生の事?」 俺「そうだけど」 妹「……あたしが頼もうとしてたのに……」 俺「ん? どうした?」 妹「なんでもない、寝る」 俺「……反抗期か?」 140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 01 13 55.22 ID 7TQhvk2x0 俺「えー、今日から本格的にポジションに別れてもらう」 俺「アップが終わったら内野と外野はノックから始めて、バッテリーは俺と一緒に打ち合わせ。午前中はこれで行こう」 部員「はい! ランニングいくぞ!」 部員A「っせー! いっちに!」 先生「ふさわしい人材……か」 俺「あん?」 先生「いや、こっちの話」 146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 01 34 26.42 ID 7TQhvk2x0 先生「あのね、俺くん実は──」 俺「そっか。監督さん見つかったのか」 先生「うん、お父様に言われて。……ごめんね?」 俺「何で謝るんだよ、むしろ良かったさ。この年くらいの子達は臨時コーチなんかじゃなくてちゃんとした指導者に見てもらうのが一番だからさ」 先生「はうぅ……」 俺「困った時に出るその癖、昔から変わってないな」 先生「そ、そうかな」 147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 01 37 51.29 ID 7TQhvk2x0 俺「よーし、じゃあバッテリーちょっと集まってくれ」 部員B「っす。キャッチャーの部員Bです、どもよろしく」 俺「おう、部員Bだな? よろしく」 少年「……ちーっす、ピッチャーやってます」 俺「なんだなんだ、クールな感じだな? よろしくな」 妹「はい! ピッチャーの妹です!」 俺「おう、よろしく」 148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 01 51 01.95 ID 7TQhvk2x0 俺「バッテリーはチームを支える柱みたいなもんだ。どんなビハインドの場面でも絶対に諦める事は許されない、特に投手の枚数が少ないチームならなおさらだ」 部員B「はい!」 俺「あと二ヶ月で結果を出す為には色々な方法が考えられるが。簡単な方法が二つある、一つ目は正攻法で攻める事、二つ目はウラをかく事だ」 妹「ウラ?」 俺「そうだ、例えば二球続けて同じコースに同じ球種を投げたとしよう。そしたらバッターは何と考える?」 妹「もう一度同じ球は無い」 俺「正解だ、だがその逆も然り。だからこそ、その前の打席が持つ意味合いが増えてくる」 部員B「前の打席?」 149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 01 51 42.95 ID 7TQhvk2x0 俺「そうだ、バッターってのは何を安打したのかは意外と覚えてないが’自分が打ち取られたボール’ってのは不思議と目に焼きついてるもんだ、それを利用する」 部員B「というと?」 俺「それを打席の中でチラつかせるんだ。少なくとも一試合に三回は打席に立つわけだからな、配球の中にその匂いを残すんだ’ほら、次はこのボールを投げるぞ’ってな。そこに迷いが生じる。その迷いが大きければ大きいほど凡打になる確率は自然と上がる」 部員B「ほうほう」 俺「それを可能にするには打者との対決を一打席で完結させない事だ。捕手は配球を覚え、投手はそこに良いボールを投げ込む。一朝一夕にできるもんじゃないがとにかく’一打席で完結させない’事を頭に入れてくれ、まずはそこからスタートだ」 部員B「はい!」 俺「うん、良い返事だ」 151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 01 21.90 ID 7TQhvk2x0 俺「それじゃあ、ちょっと投げ込みしてみようか。球筋も見てみたいし」 少年「……ちーっす」 先生「すごいのね」 俺「あん?」 先生「俺くんの言ってる事、半分もわからなかった」 俺「別に普通だよ。俺だって学校の先生をやれと言われてもできない、それだけの話だろ?」 先生「そうかな」 俺「そうだよ、誰だって不得意な面があれば得意な面もある。それを補っていくのがチーム、だろ?」 先生「え……」 俺「むかし怪我して自暴自棄になってたころ、委員長が教えてくれたじゃないか」 先生「そ、そうだっけ」 俺「そうだよ」 152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 04 26.62 ID 7TQhvk2x0 少年「……」 バシン 俺「ナイスボール、良いストレートだ」 少年「……」 俺「ん?」 少年「そ、っすか」 俺「……?」 153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 06 16.44 ID 7TQhvk2x0 妹「いくよ、カーブ」 部員B「へい」 妹「っ!」 バシン 俺「おぉ、曲がるようになってる」 妹「へへーん、どんなもんよ?」 俺「ちょっと見ない間に成長したな」 妹「えへへ」 154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 15 59.12 ID 7TQhvk2x0 俺「よーし、じゃあちょっと全員集まってくれ」 部員「集合!」 俺「いま全員で何人居るんだっけ?」 部員「18人です」 俺「よーしじゃあ9人に分かれて紅白戦をやろう。チームはキャプテンと相談してこっちで分けるから勝敗は関係なく気楽にやってくれ、普段の動きを見てみたい」 部員C「気楽にって……」ヒソヒソ 部員D「やる気あるのかなあのコーチ……」ヒソヒソ 155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 19 08.43 ID 7TQhvk2x0 Prrrrrrrrrrrrrrrrrr... 俺「また先輩からか……。悪い、ちょっと電話だ、適当に休憩しといてくれ」 部員「はい」 俺「もしもし──」 部員C「何喋ってんだろうな?」ヒソヒソ 部員D「さあ」ヒソヒソ 部員C「ちょっと聞きにいってみる?」ヒソヒソ 部員D「おい、辞めようよそういうの」ヒソヒソ 部員C「って言ってノリ気じゃんよ」ヒソヒソ 部員D「あ、バレた?」ヒソヒソ 156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 21 23.73 ID 7TQhvk2x0 先輩『おい、お前今どこに居る?』 俺「何ですか?」 先輩『今すぐ会社こい』 俺「またですか?」 先輩『おう、ちなみに拒否権ないからな』 俺「はぁ……」 先輩『先輩には従っとくべきだよ? 後々後悔するのはお前だからな』 157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 25 26.33 ID 7TQhvk2x0 部員C「なんか仕事の話みたいだな」ヒソヒソ 部員D「そうだね」ヒソヒソ 部員C「そういやコーチって働いてるんだっけ」ヒソヒソ 部員D「らしいね、俺たちより仕事の方が大事なんじゃない? 大人ってそういう生き物じゃん?」ヒソヒソ 部員C「どうせ俺らの事なんて思ってないんだろうな」ヒソヒソ 部員D「どうせコーチも先生目当てなんでしょ? 美人だし」ヒソヒソ 部員C「美人だよな……先生」ヒソヒソ 部員D「だよなぁ……」ヒソヒソ 俺「バカ言わんでください。俺はいま子供達に野球を教えてるんです」 部員C・D「?!」 162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 31 29.74 ID 7TQhvk2x0 俺「じゃあそういうわけですから失礼します」 ブツン Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr... 先輩『この会社で先輩の命令拒否する意味わかる? 部長とかにチクるよ?』 163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 33 20.28 ID 7TQhvk2x0 俺「そんなもんクソくらえですよ」 ブツン Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr... 先輩『たぶんお前、クビだから。もう来なくていいよ』 俺「しつこいな、アンタも」 ブツン 164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 02 36 47.93 ID 7TQhvk2x0 Prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr... 俺「あのなあ! 俺はいま子供達に野球を──」 おじさん『おや? そうかね?』 俺「あん?」 168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 03 02 19.79 ID 7TQhvk2x0 おじさん「──という事で、今日から正式に君たち野球部の監督をしてもらう事になった俺くんだ」 俺「えー、えーっと……おじさん? イマイチ展開に付いていけないと言うか」 おじさん「あぁ。そういえば自己紹介がまだだったね。私はこの△△高校の理事をしてる者だ。これから末永く頼むよ俺くん」 俺「り……りじぃ?!」 先生「ちょっと、お父様?!」 おじさん「こらこら、学校でお父様は辞めなさい」 169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 03 04 01.35 ID 7TQhvk2x0 先生「理事長……その、話にあった監督というのは俺くんの事ですか?」 おじさん「うむ、その通りだ。彼はまだ若いが非常に良い目をしていたのでな」 先生「あの、実は──」 おじさん「──はっはっは、そういう事だったのか。既に臨時コーチを引き受けていたとは、やはり私の目に狂いは無かったのだな」 170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 03 09 42.52 ID 7TQhvk2x0 俺「えぇっと……そういうワケでコーチから監督になりました。よろしく」 部員「はい!」 俺「じゃあ、とりあえず紅白戦いってみようか」 部員「はい!」 部員C「なぁ……」 部員D「うん……」 部員C「とりあえず、あの人に付いていってみようと思うんだけど」 部員D「奇遇だね、同じ事言おうとしてたよ」 部員C「あんなの聞かされてやる気でないのは男じゃないよな」 部員D「うん」 171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 03 12 14.73 ID 7TQhvk2x0 先生「なんか、色々びっくりしちゃった」 俺「たぶん俺が一番驚いてるよ、実はまだちょっとドッキリの線を疑ってる」 先生「お父様はユーモアのある人だけど、その手のジョークは好きじゃないわ」 俺「それにしても、なんで理事長の娘が顧問やってる部活が廃部に追い込まれてるんだよ……」 先生「色々居るのよ、利権とか権力とかが好きな人がね」 俺「どこにでも居るんだなそういう輩」 先生「そうねぇ」 201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 15 20 17.68 ID 7TQhvk2x0 俺「そんなこんなで紅白戦が終わりました」 妹「完封しちゃった」 俺「う~ん、拙攻マニアには堪らない展開でしたな。って、そうじゃなくて……貧打にも程があるぞこりゃ」 妹「控えには野球経験ない子も多いから」 俺「野球は経験でやるもんじゃないよ。……とは言いつつ、こりゃちょっと骨が折れそうだな」 202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 15 22 05.81 ID 7TQhvk2x0 俺「ところで、今までスタメンはどうやって選んでたんだ?」 妹「えっと……三年生ばかり試合に出てたかな」 俺「サインは?」 妹「前のキャプテンが色々やってたみたいだけど」 俺「ふむ、なるほど」 204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 15 27 35.24 ID 7TQhvk2x0 俺「よーしじゃあ皆聞いてくれ」 部員「はい!」 俺「これから数ヶ月で勝てるチーム作りをしなくちゃいけない、それは皆がわかってると思う」 部員「はい!」 俺「そのためには圧倒的に時間が足りない、だからこれからは」 俺「打撃練習だけやっていく事にする」 205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 15 35 19.53 ID 7TQhvk2x0 部員「え、でもそれじゃあ」 俺「この中に外野フライを処理できない者はいるか?」 シーン…… 俺「じゃあ、ゴロをさばけない者は?」 シーン…… 俺「よし、大丈夫そうだな」 俺「守備はちょっとした気づきで劇的に変わる、例えば野手同士のカバーリングとかな。誰かのミスを全員でカバーし合う事を前提に動いていけばそれで充分だ」 俺「極端な話、守備はゲッツーを取れる程度の能力があればそれ以上は望まない。幸い皆はその能力を持ち合わせているようだ」 206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 15 39 43.65 ID 7TQhvk2x0 俺「それに、打撃練習やってる方が楽しいだろ?」 部員「は、はい!」 部員C「打撃、かぁ」 部員D「な、なんかやってみようかなあ……」 部員C「け、結構考えてるんだなぁ。コーチ」 部員D「もうコーチじゃなくて監督だよ」 部員C「あ、そうか」 208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 15 44 39.97 ID 7TQhvk2x0 俺「もちろん打撃練習中にも守備にはついてもらう、そこでは守備の練習だ」 俺「そこまで細かい野球ができるとは思ってない、だからミスは怒らないが怠慢プレーは許さない」 部員「はい!」 俺「まぁ、堅苦しい話はこれくらいにして。楽しくやっていこうよ、な?」 部員「はい!」 209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 15 57 01.11 ID 7TQhvk2x0 俺・妹「ただいま~」 母「あらあら、二人ともドロドロじゃない。早くお風呂はいっちゃって」 俺・妹「は~い」 俺「一緒に入るか?」 妹「お兄ちゃん!」 210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 15 58 52.76 ID 7TQhvk2x0 妹「ん……」 妹「なんだろう、この気持ち」 妹「先生とお兄ちゃんが喋ってるトコみるの」 妹「ちょっと、嫌だなぁ……」 妹「何考えてるんだろう、廃部になるかもしれないのに……」 妹「はぁ……寝よ」 211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 02 34.94 ID 7TQhvk2x0 父「おう、おかえり。お前△△高校の監督を引き受けたらしいな」 俺「え? もう知ってるの? 今からそれ言おうとしてたのに」 父「はっはっは、父さんの情報網をバカにしちゃいけないよ?」 俺「ストーカーか」 父「失礼な! 父さんはスカートなど穿かん! ぷんぷん!」 俺「どう聞き間違えたらそうなるんだよ……」 父「はっはっは」 212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 07 22.17 ID 7TQhvk2x0 父「で、どうなんだ。チームは」 俺「どうにもこうにも、全部これからだよ」 父「ほほう?」 俺「皆が皆ダイヤの原石に見える、どう教えていくかで変わるんだなって思ったらちょっと怖い」 父「そうか……、お前は良い指導者になるよ」 俺「あん?」 父「野球の光と闇を知ってるからな」 213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 11 52.19 ID 7TQhvk2x0 父「ところで最近腰の調子はどうだ?」 俺「ん、悪くないよ」 父「そうかそうか、あの河川敷の時から病院通ってるもんな」 俺「そうだな、あの少年との勝負以来……? 少年?」 父「どうかしたか?」 俺「あれ……? あいつ、ひょっとしてあの時のあいつか?」 214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 17 20.44 ID 7TQhvk2x0 少年「何すか? 人の顔ジロジロと見て」 俺「なぁ、俺とお前勝負した事あるだろ?」 少年「人違いすよ」 俺「そうか? にしちゃフォームといい、球筋といいソックリなんだがなあ」 少年「……」 俺「それにしても背伸びたな~、だからわからなかったのか。声も低くなったな? いや~ちょっと見ない間に成長したなあ」 少年「……ち」 215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 21 06.86 ID 7TQhvk2x0 少年「あぁそうだよ、あの時あんたに負けたのが僕だ」 俺「おぉ、やっぱり」 少年「……ち」 俺「いやぁ、投手がお前だとわかって俺ちょっと安心したわ」 少年「え?」 俺「頼むよ、このチームのエースはお前しか居ないからな」 217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 26 42.57 ID 7TQhvk2x0 少年「……エース?」 俺「あぁ! 頼むぞ」 少年「……ち」 俺「素直じゃないなあ」 219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 32 14.86 ID 7TQhvk2x0 部員A「っしゃあ! ピッチャーこい!」 カキーン カキーン 俺「おぉ、ナイスバッティング」 部員A「へへ? そうすか?」 俺「うん。でもお前低めのボール苦手だろ?」 部員A「え? なんでわかるんですか?」 俺「打席で構える時バットを寝かせてるからな、もう少しバットを立ててみろ、スムーズにヘッドが出るから」 カキーン 部員A「ほ……本当だ」 俺「よしよし、良い感じだ」 221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 45 04.21 ID 7TQhvk2x0 俺「そんなこんなで秋季大会の組み合わせ抽選の日がやってきました」 妹「いってきま~す!」 先生「いってらしゃ~い」 少年「なんで僕まで……」 俺「いいからいいから、はやく車乗れよ」 222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 48 46.71 ID 7TQhvk2x0 俺「じゃあ俺は申し込み済ませるから、適当に席座っとけ」 妹「は~い」 少年「……っす」 妹「ねぇ、どこと当たるんだろうね」 少年「別に、どこでも」 妹「ねぇ、なんかこんなトコ来るとワクワクしない?」 少年「……しない」 妹「そう? あ~楽しみだなぁ。でも強いとこ当たるのは嫌だなあ。夏の甲子園出場校とかさ。こんな事言ってると当たっちゃったりするかもね、あはは」 224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 16 51 54.52 ID 7TQhvk2x0 『△△高校、6番です』 俺「なん……だと……」 妹「あら」 少年「緒戦で、夏の甲子園出場校と当たるのか」 俺「……はっはっは。いいじゃないか、最初からクライマックスだ」 少年「あそこと対戦か……」 妹「ねぇ、少年。なんか顔色悪いよ、大丈夫?」 少年「大丈夫……」 225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 17 00 25.50 ID 7TQhvk2x0 俺「じゃあ車回してくるから、ちょっと待ってろ」 妹「は~い」 少年「……」 妹「ねぇ、さっきからどうしたの? 何か変だよ?」 少年「あの高校は……、本当だったら僕が行くはずの高校だったんだ」 妹「え?」 226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:2009/11/07(土) 17 05 46.59 ID 7TQhvk2x0 俺「ということで緒戦の相手は夏の甲子園出場校に決まりました」 先生「なあんだ、甲子園出場校か。強いところに当たったらどうしようかと思ってたの」 先生「え?」 先生「えぇぇぇぇぇええええ?!」 先生「どどどどどど、どうしよう俺くん! そこってめちゃくちゃ強いとこじゃないの?!」 俺「落ち着け委員長、どうするもこうするも 。勝つしかないだろう」 先生「はうぅ……」
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461 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 14 55 59.39 ID yquhOvzJ0 妹「ただの野球選手には興味ありません。この中に遠投120m以上、50m走5秒台、通産打率4割、球速160km/hの者が居たらあたしの元にきなさい、以上!」 俺「上ヶ原パイレーツがコテンパンにやられて散っていく様が眼に浮かぶようだ……」 463 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 00 05.74 ID yquhOvzJ0 俺「トンボと言えば」 妹「金属製の重いのはイヤだなあ」 俺「トンボと言えば」 父「父さんの頃は木製が主流だったな」 俺「トンボと言えば」 姉「長渕」 俺「ねーちゃんも何だかんだこの家の一員だよな」 姉「?」 465 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 05 03.13 ID yquhOvzJ0 俺「練習にスポーツドリンクを凍らせて持っていく人が居るらしい」 妹「溶け始めの甘い味が好きなんだあ」 俺「最後とんでもなく薄味になるけどな」 妹「ちっちっち、それはそれで好きなんだなあ」 俺「そっか」 妹「でもフタあける時注意しないといけないけどね」 俺「ベタベタするもんな」 妹「ベタベタするよねぇ」 466 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 10 46.21 ID yquhOvzJ0 俺「8回だったか7回だったか忘れたが。ツーアウトランナー3塁の場面、しかも5点差もあるのにサードゴロで本塁に」 妹「ルー●ーズ?」 俺「なんでわかった」 妹「一緒に見に行ったじゃない」 俺「そうだったな」 467 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 16 56.84 ID yquhOvzJ0 妹「なによ」 俺「白のアンダーシャツだからと言って、下着の色まで合わせる必要があるのか?」 妹「色付きだと透けるのよ」 俺「チームメイトも目のやり場に困るだろうな」 470 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 29 17.52 ID yquhOvzJ0 妹「ろ~っこ~お~ろ~しに~さ~っそ~うと~♪」 俺「われら~の、われらの~ダイエーホークス~♪」 妹「はいお兄ちゃん間違えたから負け~」 俺「しまった今はダイエーじゃなかった、つい……口ずさんでしまう……」 姉「ボーダフォンだったかしら?」 俺「それはわざとすぎないか?」 473 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 34 44.16 ID yquhOvzJ0 姉「ジョージ・マッケンジー? それってどこの大統領だっけ?」 俺「プロ野球選手だよ、ねーちゃん」 475 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 37 38.99 ID yquhOvzJ0 俺「ところで」 妹「なによ」 俺「下着を白にしたら却って透けるんじゃないか?」 妹「……」 俺「?」 妹「エッチ」 476 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 52 23.71 ID yquhOvzJ0 俺「おーい、妹ー。野球盤やろうぜー」 妹「いいけど消える魔球禁止ね」 俺「えー」 477 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 55 17.78 ID yquhOvzJ0 俺「野球盤が嫌という事なのでバッティングセンターに来てみました」 妹「1000円ちょうだい」 俺「ほれ」 妹「わーい」 俺「どれ、スイングを見てやろう」 479 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 15 59 39.94 ID yquhOvzJ0 カン カン カン 俺「うむ、もう少し体重を軸足に残す感じで打ってみろ」 カン 妹「こんな感じ?」 カン 俺「飲み込みが早いな、いい感じだぞ」 カン カン 480 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 16 01 34.32 ID yquhOvzJ0 俺「どれ、俺も一度やってみるか」 ブルン カン ブルン ブルン ブルン 妹「スイングは良かったよ」 俺「あ、あれ?」 481 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 16 04 36.70 ID yquhOvzJ0 俺「3年のブランクは、長い……」 妹「年寄りくさい発言禁止!」 俺「ところで、お前。なんでさっきから右打席ばっかりなんだ?」 妹「だってココ左のゲージって端にしかないもん」 俺「あぁ……、そういう事ね」 482 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 16 09 04.76 ID yquhOvzJ0 俺「いやしかし、初球にバントの構えをしてしまうのはサガというかクセというか」 妹「あー、わかる」 俺「ついつい構えてしまうんだよな」 妹「あのマシンみてたらなんとなくそうなっちゃうよね」 俺「だよなあ」 妹「だよねぇ」 483 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 16 20 54.09 ID yquhOvzJ0 俺「コイン最後だし左で打ってみるか?」 妹「う~ん……」 俺「俺のサイフは残念ながらもう吐き出すブツを持ち合わせてないらしい」 妹「じゃあ最後に左でやって帰るね」 俺「そうしろそうしろ、もう少しワキを絞ってコンパクトに強い打球ではじき返す事を意識してみろ。そうすりゃホームラン打てるかもよ」 妹「はは、まさかぁ」 パンパカパーン 俺「おぉ」 484 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 16 25 37.89 ID yquhOvzJ0 妹「うそ……、あたしがホームランなんて」 俺「今の感じだ、忘れないようにしろよ。明日試合なんだろ?」 妹「……ねぇ、お兄ちゃん。もう一回」 俺「もう金ねぇよ」 妹「もう一回」 俺「……」 妹「あと一回だけ」 俺「しゃーねーな、ホームラン打ったし特別だからな」 妹「やった! ありがとうお兄ちゃん!」 486 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 16 40 18.25 ID yquhOvzJ0 妹「バースかっとばっせバース♪ ライト~へレフトへホームラン♪」 俺「なんだ、そんなに嬉しかったのか?」 妹「うん! だって生まれて初めてだもん」 俺「そうか、初めてか」 妹「気持ちよかったなぁ」 俺「そうか、気持ちよかったか」 489 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 16 56 04.03 ID yquhOvzJ0 妹「ちょっとおしっこ行ってくるね」 俺「おう」 俺「てか、おしっこって。んな大声で言うなよ」 俺「誰かに聞かれてたら……」 店員「……」 俺「……」 491 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 16 57 28.24 ID yquhOvzJ0 店員「ゴホゴホ、あ~仕事仕事」 俺「なぜ俺が辱めを受けねばならぬ……」 俺「ぐ……、納得いかん……」 俺「……おそいな妹のヤツ」 493 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 17 02 18.85 ID yquhOvzJ0 少年「ちわっす。俺さんですよね? OBの」 俺「いかにもそうだが、君は?」 少年「妹さんのチームメイトの少年です」 俺「懇切丁寧な説明感謝する」 少年「この前の試合も見に来てましたよね。その時に」 俺「あぁ、あの時の少年か」 少年「はい」 496 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 17 07 21.53 ID yquhOvzJ0 俺「バッティングセンターに来てまで練習かね? 関心関心」 少年「そっすね。僕、俺さんを超えるのが目標っすから」 俺「ん、俺を?」 少年「その……、なんでもないです……やっぱり忘れてください」 俺「なんだ、煮え切らないなぁ。妹のしょんべんカーブみたいに切れ味のよくない返事だ」 少年「あいつは! いえ、妹さんは……その」 俺「あん?」 少年「しょんべんカーブなんかじゃ、ないと思います」 俺「あん?」 499 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 17 10 44.13 ID yquhOvzJ0 妹「あれー? 少年じゃない、何してるの?」 少年「……おう」 俺「お前長いよ、何時間かかってんだよ」 妹「レディーに向かって失礼よお兄ちゃん。さ、帰ろ? じゃあね少年また明日ね」 少年「……おう」 俺「……あいつか?」 502 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 17 16 11.18 ID yquhOvzJ0 妹「ねぇお兄ちゃん、はやく漕いでよ」 俺「ん? あぁすまない。ちょっと考え事してた。落ちないようにしっかりつかまっとけよ?」 妹「はーい」 ギーコ ギーコ ギーコ ギーコ 妹「あ、流れ星」 俺「え? どこ」 妹「残念、もうホームインしちゃったよ」 俺「あー、ちくしょう。次は俺が先に見つけるからな」 妹「次もあたしが見つけるもーん」 503 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 17 18 58.87 ID yquhOvzJ0 俺「なぁ」 ギーコ ギーコ 妹「なぁに?」 ギーコ ギーコ 俺「……なんでもねぇ」 ギーコ ギーコ 妹「?」 ギーコ ギーコ 妹「ヘンなお兄ちゃん」 ギーコ ギーコ 504 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 17 23 05.25 ID yquhOvzJ0 ギーコ ギーコ 俺「明日見に行ってやるよ、試合」 妹「え? 明日あたし投げないよ?」 ギーコ 俺「いいんだ、打席には立つんだろ?」 妹「うん」 俺「練習の成果も見せてもらいたいしな」 妹「うん!」 ギーコ ギーコ 505 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 17 27 14.10 ID yquhOvzJ0 妹「あ、また流れ星!」 俺「何? どこだ」 妹「えへへー、ウ・ソ」 俺「って、ウソかよ」 妹「まだまだだな明智少年、もっと精進したまえ」 俺「流行ってんのかそれ」 妹「あたしがとーさんに教えてあげたの」 俺「そうかい」 545 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 20 37 17.14 ID yquhOvzJ0 俺「ところで」 ギーコ 妹「内緒」 ギーコ 俺「まだ何も聞いてないだろ」 妹「どうせ何を願ったのかとか聞くんでしょ?」 ギーコ 妹「お願い事はもうしてあるから」 ギーコ ギーコ 俺「そうかい」 ギーコ ギーコ 546 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 20 41 51.97 ID yquhOvzJ0 俺「それじゃあ明日はホームランと言わないまでも猛打賞くらいの活躍はしてくれるんだろうな?」 妹「もっちろん!」 俺「やる気マンマンだな」 妹「当たり前よ。お兄ちゃんのおかげで良い感触掴めたからね」 俺「名コーチと呼べ」 妹「いよっ、お代官様」 俺「それなんか違う」 ギーコ ギーコ 550 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 20 46 13.33 ID yquhOvzJ0 妹「~♪」 父「なんだなんだ、今日はえらく気分がいいな」 姉「オトコ、ね」 父「えぇ?!」 551 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 20 50 29.38 ID yquhOvzJ0 妹「こきゅうをとめていちびょう~♪ あたなしんけんなめをしたから~♪」 父「う~む」 姉「?」 父「父さんセンサーは何も反応しないぞ」 姉「女のカンよ」 父「女のカンなら仕方ないな」 554 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 20 58 08.22 ID yquhOvzJ0 俺「なんだろう……。この、ノーアウト満塁なのに一点も入らなかった時みたいな脱力感」 姉「微妙にわかりそうで伝わって来ないわ」 俺「積極的なエラーは怒らないとか言ってるのに結局エラーしたら怒られる時みたいな空虚感」 姉「う~ん」 俺「先発全員安打かと思ったら俺だけ四球の出塁だけだった時みたいな疎外感」 姉「あんたの話にはついていけないわ」 556 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 21 06 58.50 ID yquhOvzJ0 姉「あの子の機嫌の良さとあんたの凹み加減は関係してるのかしら?」 俺「……わかんねぇ」 姉「わからない?」 俺「あぁ、隠し球をくらった気分だ」 姉「?」 561 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 21 18 00.14 ID yquhOvzJ0 姉「あのね」 俺「なにさ」 姉「……いや、なんでもないよ」 俺「なんだよ」 姉「あんたが、あの子の事を本当に大切に思うなら」 俺「なんだよ」 姉「皆まで言わすな」 ゴン 俺「痛っ」 562 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 21 20 32.95 ID yquhOvzJ0 俺「おー、いてぇ」 姉「おねーちゃんチョップよ」 俺「いてぇ、いてえよ」 姉「そんなに強くしてないでしょ」 俺「うるせぇ、いてぇんだよ」 姉「泣くほど?」 俺「泣いてないよ」 姉「そう」 俺「そうだよ」 563 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 21 26 18.68 ID yquhOvzJ0 妹「おとーさん、おかーさん、おねーちゃん、お兄ちゃん。行ってきます!」 母「はいはい、頑張ってらっしゃい」 父「怪我のないようにな」 俺「……」 姉「ほら、あんたも何か言いなって」 俺「お、おう……頑張れよ」 妹「うん! お兄ちゃんが見に来てくれるからあたし頑張っちゃうよ!」 俺「そうか」 妹「うん!」 565 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 21 30 46.13 ID yquhOvzJ0 母「かーさんだよ」 俺「誰に向かって宣言してるんだよ」 母「日本全国津々浦々の皆々様よ」 俺「?」 母「ほら、あんたあの子の応援行ってあげるんでしょ? お弁当作ったから」 俺「う、うん」 母「ちょっと待ちなさい」 俺「な、……なんだよ」 母「これ、差し入れにスポーツドリンクとバナナとプロテインを人数分」 俺「って、またかよ!」 570 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 21 43 42.33 ID yquhOvzJ0 俺「という事で妹の試合を見学に来ました」 少年「ちわっす」 俺「こんにちは」 「ちわ」「ちわ」「ちわーっす!」 俺「やっぱ慣れないな、コレ」 572 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 21 51 08.06 ID yquhOvzJ0 少年「俺さん、……ちょっといいですか?」 俺「ん、何かな?」 少年「俺、今日先発なんです」 俺「そうなんだ」 少年「僕が、勝利投手になったら。……認めてください、僕の事」 俺「ごめん。急展開すぎてお兄さんついていけないよ」 少年「好きなんです、僕。……妹さんの事が」 574 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 21 55 29.59 ID yquhOvzJ0 俺「そうか、やっぱり君だったのか」 少年「え?」 俺「なんでもない、こっちの話だ」 少年「……あの?」 576 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 21 58 09.37 ID yquhOvzJ0 姉『──』 ゴン 俺『──』 俺「……いいだろう、見せてもらおう。君のピッチング」 少年「それじゃあ、……認めてくれるんですね」 俺「勝てばな」 少年「約束ですよ」 俺「勝てばの話だぞ」 578 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 01 14.37 ID yquhOvzJ0 妹「あ! お兄ちゃん!」 少年「それじゃあ、また後で」 俺「おう」 妹「あれ? 少年と何か話してたの?」 俺「男と男の話だよ」 妹「ふーん?」 581 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 03 51.75 ID yquhOvzJ0 監督「集合!」 妹「あ、じゃあ行って来るね」 俺「おう、頑張れよ」 妹「~♪」 俺「……上機嫌だな」 俺「……なんか複雑だよ」 583 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 06 30.61 ID yquhOvzJ0 俺「さて、どうなる事かね」 俺「しっかし」 俺「あの少年。高校に行っても即戦力になりそうなボール投げるなぁ」 ズバン 審判「ットライク、バッターアウト!」 俺「お見事」 585 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 12 21.21 ID yquhOvzJ0 俺「一番バッターを見事三振に切ってとりました少年投手、ロージンを二回三回掌で躍らせます。振りかぶって投げた判定ストライク」 俺「左打者の膝元にキレのあるストレートを投げ込んでいきました、相当自信があるマウンド捌きです」 俺「ズバっときた、空振り三振っ! 唸るボールがキャッチャーミットに吸い込まれていきました! 初回三人を三振で討ち取りました、この回12球でチェンジです。ゲームは裏の攻撃へと続いていきます」 父「ふむ、ナイス実況だね」 586 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 14 44.86 ID yquhOvzJ0 俺「っていうか、居たんだ」 父「車で来た」 俺「俺チャリであの荷物持ってきたのに」 父「いっとくが今回はちゃんと声を掛けたぞ、お前が無視するから父さん傷ついちゃったなあ」 俺「そうだっけ」 父「そうだよ、父さんショックだったよ」 589 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 17 47.42 ID yquhOvzJ0 父「それにしてもあのピッチャー、いい球投げるなぁ」 俺「一試合目の先発だからな」 父「ただちょっと球数が多くなり気味な傾向があると見た」 俺「奇遇だな、同じ感想だよ」 父「三振は三球投げないとダメだもんね」 俺「そうだな」 父「ところで妹はどこ?」 俺「ライト守ってる、8番らしい」 父「ライパチか」 俺「ライパチだな」 591 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 22 17.64 ID yquhOvzJ0 父「うーん、2回3回4回とトントン拍子に来てるなぁ」 俺「いい球だよ、どこの高校行ってもエースはれる実力はあると思う」 父「そう思うか? 四球は無いけどボール先行だしリードに苦しそうだけど」 俺「まだ発展途上だからな」 父「う~ん、やっぱり父さんセンサー反応しないなあ」 俺「何の話?」 父「こっちの話」 俺「あ、そ」 593 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 25 53.14 ID yquhOvzJ0 父「にしても、妹のスイング何か変わったね」 俺「ワキをしめろって言っただけで理解して吸収しやがった」 父「大振りしても非力だからコンパクトにって、言うのは簡単だけどね」 俺「さっきの打席の安打がまぐれじゃないってのを見せてもらいますか」 父「そうだね」 妹「お願いします!」 妹「さっ、こーい!」 594 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 30 53.54 ID yquhOvzJ0 妹「っ!」 カキーン 俺「あ」 父「おお」 俺「左中間割った……」 父「ひょっとして初の長打、初の打点じゃないか? はっは、さすが父さんの娘だなあ」 俺「成長、か」 父「成長だなあ」 598 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 35 26.81 ID yquhOvzJ0 審判「バッターアウト! チェンジ!」 父「いやいや、さっきのはナイスバッティングだったよ? お見事だ」 俺「そうだな」 父「守備につく姿も少しばかりサマになってないか? イチローみたいだ、はっは」 俺「そうだな」 父「これで1点リードしたし、このまま行けば……」 カキーン 俺「ところが、そう上手くはいかないんだなあ」 600 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 40 08.89 ID yquhOvzJ0 父「ふむ、この試合打たれた初めての安打だね」 俺「セットポジションになってどうなるか」 父「意外とセットになって崩れる投手は多いからね、この試合初めてとなるとなおさらだ」 俺「それ嫌ってセットで投げてる投手も多いよな」 父「流れが変わるとしたらココだ」 俺「さあ、どうするよ。少年」 602 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 43 02.93 ID yquhOvzJ0 審判「ボール! フォアボール!」 父「苦しいマウンドだな」 俺「急に制球が乱れだしたな」 父「よくあるんだ、あれは。誰かマウンドに行ってやらんと、このままズルズル行くぞ」 604 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 22 49 42.20 ID yquhOvzJ0 カキーン 俺「あーあ、逆転されちまったよ」 父「そのわりに、なんだか嬉しそうだな」 俺「そうか?」 父「そうだよ」 605 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 00 07.44 ID yquhOvzJ0 父「それにしても悪い流れだなぁ、スミを狙ったのが全部外れてる」 俺「さっきから甘いコースに何球もいってるよ、打者が空振りしてくれてるから助かってるようなもんだ」 父「ここで四球でも出すようなモンなら最悪の流れだなあ」 審判「ボール! フォアボール!」 父「父さん余計な事言ったかい?」 俺「いや」 606 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 04 33.07 ID yquhOvzJ0 妹「ピッチャー! ラクにラクに!」 少年「……っ」 審判「ットラックアウト!」 妹「ナイスボール!」 少年「……うん」 父「いいストレートだ、あれをいつでも出せるようになればな」 俺「そうだな」 父「さて、最終回で1点差か。妹に打順が回るには2人塁に出なきゃな」 607 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 12 24.47 ID yquhOvzJ0 審判「フォアボール!」 父「なんか今日は良いところで回ってくるなあ」 俺「1.3塁か」 父「さっきみたいに間を抜ければ長躯ホームインもありえる」 俺「まさか」 カキーン 父「その’まさか’があるから、野球は面白い。そうだろ?」 妹「いっけぇえええ!!」 608 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 16 31.80 ID yquhOvzJ0 俺「1塁ランナー生還……。サ、サヨナラだ……」 父「はっは、今日は赤飯でも炊くか」 俺「それはなんか意味が違う気が」 父「細かい事は気にするな、じゃあ父さん帰るから後ヨロシク」 俺「あ、ちょ……行っちゃったよ」 俺「はぁ」 俺「なんか……複雑だなあ」 614 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 33 16.12 ID yquhOvzJ0 妹「お兄ちゃん! 見た? 見た? 見た!?」 俺「おう、そんなでかい声出さなくても聞こえてるしちゃんと見てたぞ」 妹「やっちゃった! あたし、やっちゃった!」 俺「ああ、やったな」 妹「お兄ちゃん……?」 俺「どうした?」 妹「なんか。嬉しくなさそう、お兄ちゃん」 俺「そんな事ないさ、嬉しいよ」 妹「……ほんと?」 俺「あぁ、本当さ」 妹「……ウソツキ」 616 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 40 50.29 ID yquhOvzJ0 俺「よう」 少年「……ども」 俺「勝ったな、見事に勝利投手だ」 少年「……」 俺「良かったな、おめでとう」 少年「……今日のは、ナシでいいです」 俺「あん?」 618 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 42 33.54 ID yquhOvzJ0 少年「……試合には勝ったけど、勝負には負けました」 俺「どう見ても君の勝ちだろう? サヨナラも立派な勝ち方だよ?」 少年「……自分の中で……納得がいかないです」 俺「あん?」 少年「勝手ながら、……保留にさせてもらいます」 俺「……勝手にしろ」 619 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 44 25.77 ID yquhOvzJ0 父「という事で赤飯を炊いてみました」 妹「……」 俺「……」 父「あ、あれ? なんか空気重くない?」 姉「オトコ、ね」 父「えぇ?!」 620 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 48 26.48 ID yquhOvzJ0 父「なあ、あの子と何かあったのか?」 俺「知らん」 父「うぅ……」 父「そ、そうだ妹よ。久しぶりに一緒に風呂でも入るか?」 妹「変態」 父「うぅ……」 父「父さん何か悪い事したかなぁ……」 622 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 54 28.69 ID yquhOvzJ0 俺「はぁ……。妹のヤツ……、あんなののドコが良いんだよ……」 俺「だいたい認めるも無いだろうに、何で俺が認めにゃならんのだ」 俺「あぁもう、なんで眠れないんだよ」 俺「バカたれが」 俺「男だったら難しく考えるな」 俺「……眠れない……」 623 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/21(水) 23 56 17.26 ID yquhOvzJ0 妹「はぁ……。お兄ちゃんのバカ……、なんでもっと喜んでくれないのよ……」 妹「お兄ちゃんの為に頑張ったのに」 妹「初めての長打、初めての打点だったのに」 妹「それに、サヨナラだよ? もう一生に一度しか無いかも知れないくらいなのに」 妹「お兄ちゃんのバカ、大っ嫌い」 妹「……だいすき……」 625 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 05 40.67 ID B4/s0rPw0 父「朝だよー、今日は父さんがスクランブルエッグ作ったよー」 俺「……」 妹「……」 姉「……」モグモグ 父「うぅ……」 628 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 08 14.89 ID B4/s0rPw0 父「父さんは……父さんは……」 父「こんな一昔前のパリーグの外野席みたいな食卓は嫌だぁぁぁあああああ!」 母「朝から元気ね」 姉「ホントね」 630 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 12 01.47 ID B4/s0rPw0 俺「……」 妹「……」 俺「……」 妹「あ、あの。お兄ちゃん」 姉「!」 俺「……あん?」 妹「ちょ、ちょっといいかな?」 俺「今日は、忙しい。出かける」 妹「あ……、うん……」 母「不器用ね」 姉「ほんと、不器用ねぇ」 631 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 18 11.97 ID B4/s0rPw0 俺「家に居れる空気じゃないので逃げて来ました」 俺「おや? こんなところにバッティングセンターが」 俺「特に行くトコもないし、ちょっと寄ってくか……」 少年「ちわっす」 俺「そんな気がしてたよ」 少年「?」 俺「いや、こっちの話」 632 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 22 58.04 ID B4/s0rPw0 俺「まぁ好都合だ。少年、今度は俺から勝負を申し込もう」 少年「奇遇ですね、僕も同じ事を言おうとしていましたよ」 俺「勝負の方法は」 少年「ガチンコ一打席勝負でいいですよね」 俺「もちろんだ、君が投手で俺が打者」 少年「三振凡打で僕の勝ち」 俺「ヒット性の当たりで俺の勝ちだ」 少年「最初からこうしていれば話は早かった」 俺「舐めるなよ。子供のボールでこの俺が抑えられると思ったら大間違いだ」 少年「俺さんこそ、その腰を言い訳にしないでくださいよ?」 俺「上等だ!」 633 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 28 23.99 ID B4/s0rPw0 少年「勝負は次の日曜日」 俺「場所はいつもの野球場でいいだろう」 少年「ケツまくって逃げないでくださいよ?」 俺「ケツの青い坊やに言われたかないね」 少年「はっ、くだらない。すぐにそんな口を利けないようにしてあげますよ」 俺「ガキはさっさと帰ってママのおっぱいでも吸って寝てな」 少年「その言葉、そっくりそのまま返しますよ」 俺「ふん。よく見りゃ愛想の無いクソガキじゃねぇか。こんなののドコがいいんだか」 少年「なんだと!」 635 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 31 20.93 ID B4/s0rPw0 俺「せいぜい首を洗って待ってるんだな」 少年「あなたが妹さんの御兄さんじゃなければ、同じ空気すら吸いたくありませんね」 俺「口の減らねぇガキが」 少年「まぁいいでしょう。ここで言い争ってても仕方ありません」 俺「おう」 少年「逃げずにちゃんと来てくださいよ?」 俺「どっちが」 638 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 34 59.87 ID B4/s0rPw0 ブン ブン 姉「どうしたのあの子? 急に素振りなんか始めちゃって」 母「さあねぇ」 父「うぅ……、食卓が……楽しい食卓が……」 639 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 37 54.51 ID B4/s0rPw0 俺「ダメだ……、スイングのキレが無くなってる……」 俺「腰、痛ぇ……」 俺「……こんな調子で勝てるのかよ」 妹『──』 俺「いや、勝つ」 俺「兄として、勝つ」 ブン ブン 641 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 00 40 15.49 ID B4/s0rPw0 妹「ねぇ。おとーさん」 父「な、な、なんだい?!」 妹「お兄ちゃん、あたしの事嫌いになっちゃったのかな?」 父「……ん」 妹「だって、あたしが打っても……全然嬉しそうじゃなかったし……」 643 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 01 49.88 ID B4/s0rPw0 妹「一番、お兄ちゃんに、喜んで欲しかったのに……」 父「妹よ、いいかい?」 妹「うん?」 父「男という生き物は単純でバカな生き物なのだ。一つの事にしか集中できない、同時に二つの事は見れないんだ。特にあいつは視野が狭いからな、遊撃手のくせに」 妹「ごめん……よくわからない……」 父「まぁようするに、だ」 妹「うん?」 父「お兄ちゃんは今、戦ってる。それは見えない何かかもしれないし、他の誰かかもしれない」 妹「……」 父「だから、少し待ってあげよう。お兄ちゃんが自分の足で歩けるまで」 妹「うん……」 父「よしよし、いい子だ」 644 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 05 52.24 ID B4/s0rPw0 俺「いててててててて……」 俺「……」 俺「いや、痛がってる場合じゃない」 俺「いてててて……」 647 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 16 31.66 ID B4/s0rPw0 俺「そんなこんなで勝負の日」 少年「逃げずに来たのは褒めてあげますよ」 俺「1時間後に同じ台詞が吐けるかな」 少年「俺さんが僕の前に平伏す姿が想像できますよ、そんなコルセットまいちゃって勝つ気あるんですか?」 俺「うるせぇ」 少年「怪我してるからって手は抜きませんよ」 俺「ボケが、んな事したら承知しねぇぞ。全力で来い」 少年「望むところですよ」 649 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 20 46.75 ID B4/s0rPw0 妹「少年。何よ、こんなトコに呼び出して……って、お兄ちゃん?」 俺「……なんで妹が」 少年「僕が呼び出したんですよ」 妹「ねぇ、どうしてお兄ちゃんと少年が一緒に居るの?」 少年「これは俺さんと僕の勝負なんです」 妹「勝負?」 俺「あぁ、男と男の勝負だ。お前はそこで見てろ、いいな?」 妹「わかった! みてるね!」 650 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 24 48.51 ID B4/s0rPw0 父「キャッチャーが必要だろう、あっしがマスクを被りやしょう旦那」 少年「誰だよ、オッサン」 父「通りすがりの捕手ですぜ旦那、御気になさらず。ささ、肩を作りましょうぜ」 少年「……ふん」 姉「なんかおとーさんキャラ違うくない?」 母「あらあら」 652 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 27 30.07 ID B4/s0rPw0 少年「さて、舞台は整った」 俺「そうだな」 少年「後はあんたを──黙らせるだけだ」 俺「やれるもんなら──やってみろ」 少年「いくぞ!」 俺「こい!」 653 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 30 08.27 ID B4/s0rPw0 少年「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 ズバン 俺「クソ、なんてストレートだ。バットにかすりもしない!」 少年「ははは、そんなもんか! 大した事ないな!」 俺「うるせぇ、こっちはまだ本気の20%も出してないんだよ!」 655 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 32 57.51 ID B4/s0rPw0 ズキズキ 俺「……くねぇ……くねぇ……いたくねぇ……痛くねぇ」 俺「よっしゃあああ!! こい!!」 少年「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 ギィィィン 俺「くっそ、ファールか」 少年「これで追い込みましたよ。あと一球で地獄へ送ってあげますよ、せめて苦しまないように手も足も出ないボールでね」 俺「言ってろ、バカが」 ズキズキ 657 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 35 38.05 ID B4/s0rPw0 ズキズキ 俺「(あぁ、痛ぇなぁ)」 俺「(正直立ってるのがやっとでボールなんかよく見えないし)」 俺「(負ける……のか)」 俺「(まけr)」 妹「がんばれ! お兄ちゃん!」 659 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 38 42.70 ID B4/s0rPw0 俺「(そうだ、そうだよ)」 俺「(何の為に俺は)」 俺「(俺は)」 俺「うおおおおおおおおおお!!」 少年「な……コルセットを外した、だと……?」 俺「これでようやく自由に動けるぜ。さぁ来な、地獄へ送ってやる」 664 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 51 08.15 ID B4/s0rPw0 少年「く……コルセットを取ったくらいで何を」 俺「俺のコルセットは108キロだ!」 少年「何をわけのわからない事を!」 カキィィィィ……ン! 少年「なん……だと……」 妹「ホ……」 妹「ホームラン! ホームランだ!」 671 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 01 57 16.42 ID B4/s0rPw0 少年「負けた……僕が。この、僕が……」 俺「はは……やった」 俺「……やったぞ」 俺「勝ったぞ、畜生め」 ドサッ 672 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 02 01 07.50 ID B4/s0rPw0 妹「お兄ちゃん! お兄ちゃん! しっかりして!」 俺「おぉ、あんまり揺さぶるな。痛い……」 妹「ご、ごめん……」 俺「勝ったぞ」 妹「うん……見てた、見てたよ」 俺「そうか、見てたか」 妹「うん。ちゃんと見てたよ……」 673 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 02 06 39.31 ID B4/s0rPw0 俺「ごめんな」 妹「何で謝るの、こんなにボロボロになるまでお兄ちゃん頑張ったじゃない」 俺「俺はお前を傷つけてしまった」 妹「ううん、いいよ。もう、いいの」 俺「妹……」 妹「お兄ちゃん……」 俺「バカ、なんでお前が泣いてるんだ」 妹「泣いてなんかないもん、泣いてなんか……」 俺「そうかい」 674 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 02 10 06.88 ID B4/s0rPw0 少年「僕の負けだ……」 俺「あぁ、でも良いボールだった。最高のストレートだったよ」 少年「……僕の、負けだ」 父「ここに息子と少年との新たなる友情が……」 俺「つーかお前! 俺年上なんだから敬語つかえよな!」 少年「死んでも嫌だ! アンタにはもう一生敬語なんか使わないね!」 俺「なんだと! てめぇ!」 父「芽生えなかったのである……」 679 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 02 15 03.12 ID B4/s0rPw0 俺「そうだ、妹」 妹「うん?」 俺「あの皮手、買いに行くか」 妹「──、覚えててくれたんだ」 俺「当たり前だ、なんたって俺は」 俺「お兄ちゃんだからな」 ED曲「sugar!!」 684 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/22(木) 02 39 23.20 ID B4/s0rPw0 妹「それで、お兄ちゃんと少年は何の勝負をしてたの?」 俺「あぁ。あいつをお前の彼氏として認めるかどうかの勝負をだな」 妹「へ? 少年があたしの彼氏? 何言ってるの?」 俺「……は?」 妹「確かに告白されたけど、あたし断ったよ? 全然タイプじゃないもん」 俺「……こんなオチかよ!」 姉「……」 俺「ねーちゃん、ちょっとまて。そもそも(描写は無いけど)あいつに彼氏が居るらしいって事はねーちゃん情報だったよな」 姉「違うわ、女のカンよ」 俺「一緒だ!」 妹「何の話~?」 母「あらあら、仲がいいわねぇ」 父「はっはっは。結構結構。女のカンより父さんセンサーの方が正しかったという事だな」 妹「ねぇ何の話~?」 おしまい。 以下、ボツネタ。 俺「……」 父「お前に一言言っておく事がある」 俺「なんだよ」 父「他の誰を応援しようと勝手だが、父さんだけは妹の味方だ」 俺「……なんだよ」 妹「でも男の人って」 俺「なんだ?」 妹「やっぱり、その」 俺「?」 妹「む……胸の大きい人が好きなんじゃないの?」 俺「あん?」 妹「かべとかつるぺたとか言われるもん」 俺「あん?」 俺「腰をクルっと回してバッと振る。と、指導する監督が居るらしい」 妹「ゴジラとかは一瞬で解ったって聞くね」 俺「天才同士通じ合うものがあったのだろうか」 妹「そうかもね」 俺「とーさんから教えられたのは好球必打って事だけだったよ」 父「それは基本だ」 俺「基本は基本だから難しいんだよ」 父「」 妹「高校野球でも2時間はかかるのにね」 俺「」 姉「なるほど、その’せりーぐ’と’ぱりーぐ’っていうのに分かれてるのね」 俺「そうそう」 姉「ふーん、サッカーと一緒なのね」 俺「ん?」 姉「どっちがJ2なの?」 俺「おいこら」 姉「それでね」 俺「今度は何」 姉「どこに隠したの?」 俺「は?」 姉「知ってるのよ、野球場の中にダイヤモンドがある事は」 俺「自分で探したまえワトソン君」 妹「ねぇお父さんお母さん」 妹「あたし、どうすればいいのかな」 妹「プロだって、こんなあたしが」 妹「夢みたいな話だとずっと思ってたけど」 妹「夢って、何か。こう、もっとモヤモヤとしてて、つかんでもつかみきれなくて、そんなものだと思ってた」 妹「だけど、お兄ちゃんから聞かされた時いきなり現実がどーんとやってきて。実感はなかったけど、でもホントは嬉しかったけど、イヤって言っちゃった」 妹「高校だって行きたいし、高校野球だってやりたい。プロになるのはそれからだって遅くないよね。お兄ちゃんを追い越してからでも遅くないよね」 妹「ね?」 ザァー
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蔵妹市 広報局へようこそ! 「蔵妹市」とはMinecraftで開発中の架空都市です! 蔵妹市のデータや企業等を紹介します! 以下より移動して下さい。 蔵妹市の詳細情報が見たい!→蔵妹市 データ 蔵妹市にある企業が知りたい!→企業紹介
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#ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (悶絶じゃが妹編) じゃが妹 22歳。Dカップ。8年前兄のオナヌー見て以来冷戦状態。 ヌクモリティ溢れるレス&安価で仲直りし…… このスレ最初の女性コテ #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (悶絶じゃが妹編) じゃが兄 24歳会社員。純情かつほのぼのとした良き兄。涙腺弱い。でもエロ じゃが妹の軌跡 ファーストコンタクト 仲直り 閑話休題~じゃが妹がじゃが妹になった日~ 肉じゃが 晩酌 お仕事がんばってね 1/28夕御飯 1/29晩酌
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記事の主体によって分類しています 区分→感染例・宮崎県・民主党・自民党・農水省・その他 今後の予定 今までの経過 5月19日 その他:zakzakは、東国原知事を雪印事件の社長になぞらえた上で、「こいつは勘違い男だ」「県知事という権力を持ち続け、次第に傲慢な人間性が出てきたよう」と批判した。また、荒井正吾奈良県知事は、「初動のミスを他山の石とするよう関係者に周知徹底するようにしている」とし、宮崎県の初動対応が遅れたと批判した(ソース)。 ○あの事件と…東国原、記者にブチ切れ「ケンカ売っているのか」 - 政治・社会 - ZAKZAK ○YouTube - 【口蹄疫】東国原知事 会見でマスコミに激怒(2010_05_18).mp4 5月18日 その他:昨年は一年間で16件398万円だったが、今年は5月18日現在で既に1800万円の寄付が寄せられている。 【口蹄疫】対策に使って…「ふるさと納税」昨年度の4倍に 宮崎県に殺到 (1/2ページ) - MSN産経ニュース その他:日刊ゲンダイがツイッターtwitterで、、「東国原浮かれ知事に天罰 口蹄疫大被害と疫病神知事 お笑い芸人失格人間を知事に選んだ宮崎県民に責任があるのに国の税金で救済は虫が良過ぎないか」と発言した。明日19日、当該発言を見出しとした紙面が発行される見通しである。 ○twitter日刊ゲンダイ・魚拓 ○5月19日付紙面(アップローダー) ○○2chスレ 【ゲンダイ】東国原知事に天罰 お笑い芸人失格人間を選んだ宮崎県民に責任があるのに国の税金で救済は虫が良過ぎないか…とゲンダイ 5月17日 その他:フジテレビの取材スタッフが、なんのコンタクトもなく佐土原町の田ノ上地区の畜舎を訪れ、消毒もせず取材を始めたことが、自民党の横田照夫県議のウェブサイトで明らかとなった。取材スタッフは、消毒ポイントがどこにあるのか知らなかったと言う。現地関係者は、マスコミが口蹄疫感染地域を拡大することを危惧している。その後、横田県議のウェブサイト全体が閲覧不能となったが、魚拓や 2chスレで内容を知ることができる。 ※5/19ブログ復帰:アクセス集中の為とのこと。 ○マスコミに怒り :宮崎県議会議員(自民党) 横田照夫氏のウェブサイト ○上記サイトの魚拓:スクリーンショット ○2chスレ 【口蹄疫/マスコミ】宮崎県会議員の横田氏「フジテレビの取材スタッフが消毒もせずアポなしで畜舎に。何という配慮のない行動だ」★2 5月15日 感染例:宮崎畜産の要、(社)宮崎県家畜改良事業団で口蹄疫の疑似患畜が確認された。西日本新聞は、種牛49頭、肥育牛259頭の計308頭を殺処分すると報じている。殺処分される308頭には、特例で避難させた6頭の種牛は含まれていない。この6頭は今度、厳重な監視下で経過観察される。この日、東国原英夫知事はTwitterで「大変なことになった。」と呟いた。 ○農林水産省 宮崎県における口蹄疫の疑い事例の92例目~101例目について 5月13日 その他:ツイッターtwitterで「口蹄疫」や「外国人参政権」を検索しても、正常な検索結果とはならないとする疑惑が2chで提起された。ツイッター公式サイト(twitter.com)のワード検索は「googleapis.com」により行われているようである。 ○【ネトウヨ脳】twitterが検閲中?「口蹄疫」「外国人参政権」で検索してもヒットせず 5月10日 農水省:赤松農水相(民主党)、宮崎県において、東国原宮崎県知事をはじめ関係者と口蹄疫の防疫対応等について意見交換。:(ソース)(ソース) 延期 農水省:赤松農水相(民主党)、「あぜ道キャラバン」キャンペーンのため秋田県へ出張予定だったが(ソース) 、5/8に延期が公表された。:(ソース) 5月8日 民主党:赤松農水相、外遊から帰国。富岡よしただ後援会結成大会(栃木県佐野市文化会館小ホール)に出席。(ソース) 挨拶後、農水省に向かう。(ソース) 5月7日 民主党:小沢幹事長、選挙協力の要請のため宮崎県入りし東国原知事に面会。 東国原氏は県内で牛や豚の口蹄疫が発生していることを受け、早期の激甚災害指定などを要請した。小沢氏は会談後、記者団に対し「激甚災害を適用する話ではないが、政府に早く感染を止める処置を講ずるよう申し上げたい」と語った。(ソース) 農水省:福島瑞穂、農水大臣代理として職務執行 福島瑞穂(社民党党首)は5月7日、農林水産大臣臨時代理として、家畜伝染病予防法施行規則第四十三条に係る昭和四十六年十二月一日農林省告示第千九百九十七号の一部を改正する「農林水産省告示第七百八号」を発出した。当該発出は官報第5306号に掲載された。 平成22年5月7日官報第5306号:公開期間30日 5月6日 農水省:小委員会、ウイルスは人や車両などの移動で拡散している疑いが強いとの見方を示す。 (隣接した地域で発生していないのに、離れた場所で発生していることなどから、風で運ばれている可能性は低いとしている) 民主党:山田副大臣が会見を行うが発言が支離滅裂で状況の把握が出来ていない事をさらす。 感染例:児湯郡川南町の繁殖牛農家3件(合計109頭)、酪農農家1件(75頭)、養豚農家8件(合計10,723頭)で疑似患畜を確認 5月5日 感染例:宮崎県、感染例23例目確認 殺処分34000頭突破 宮崎県:新たに副知事をトップとする特命チームを設置し体制の強化を図る 農水省:緊急調査で宮崎県を除くすべての農場で疑いがないことを確認。早期発見の徹底を指導。 5月3日 感染例:宮崎県、感染例17例目確認 殺処分9000頭突破 5月2日 感染例:宮崎県、1例目の農場から南に約8km離れた農場で15例目の感染確認 5月1日 宮崎県:宮崎県、自衛隊に災害派遣要請を行う。家畜の殺処分は8000頭超へ 宮崎県:九州各県で飼料用輸入稲ワラの自主規制、国産稲ワラへの自主転換。 4月30日 自民党:自民党口蹄疫対策本部、政府に42項目にわたる対策要請の申し入れ 民主党:対応を予定していた鳩山由紀夫総理・赤松農水相は、当日になって予定をドタキャン 民主党:夕刻、赤松農水相、コロンビア・キューバへの外遊へ 自民党:自民党口蹄疫対策本部、党本部で記者会見 「10年前の感染の際は、ただちに100億の予算が確保され、対策がなされた」 「ところが、この段階になっても、国から宮崎県には一箱も消毒薬が支給されない」 「この状況で農水大臣が外遊するとは、自民政権時代からすれば前代未聞」 「国から消毒液一箱も届かず。国が配ったように報道されているが、まったく誤報」 4月29日 民主党:農林水産副大臣が宮崎県に出張。ただし現場には入らず生産者への面会もなし 4月28日 感染例:国内初の「豚」への口蹄疫感染疑いを確認 自民党:自民党口蹄疫対策本部長である谷垣自民党総裁、現場を視察 宮崎県:県が33億円緊急対策 農家へ金融支援を柱に その他:国際連合食糧農業機関がアウトブレイクの表現でプレスレリース 4月27日 宮崎県:東国原宮崎県知事、赤松広隆農水相や谷垣禎一自民党総裁に支援を要請 4月25日 感染例:新たに4頭の感染が確認。殺処分対象は1000頭を突破、過去100年間で最多 4月23日 感染例:牧場で口蹄疫の感染を確認。子牛を含む全ての水牛の殺処分が確定 4月22日 民主党:副大臣「現場の状況について今初めて聞いた」 4月21日 感染例:2例目発生 宮崎県:政府の指示なし、仕方なく現地で対応。 宮崎県:消毒薬は現地組合が用意、数が不足 赤松大臣は都内のスーパー視察 規格外野菜を歓迎 4月20日 感染例:早朝、農林水産省からPCR検査(遺伝子検査)で陽性との連絡。宮崎県で10年ぶりに口蹄疫 感染が確認。 民主党:日本産牛肉の輸出を全面停止 民主党:口蹄疫の疑似患畜の確認及び口蹄疫防疫対策本部の設置 民主党:赤松大臣、宮崎選出の外山いつきから消毒液などが足らないことの報告を受ける 4月18日 イバラキ病等の類似疾病について、全て陰性を確認。 4月17日 再度、立入検査を実施したところ、別の2頭に同様の症状があることを確認。同日、病性鑑 定を開始。 4月 9日 開業獣医師から宮崎家畜保健衛生所に、口腔内にび爛(軽度な潰瘍)のある牛がいるた め、病性鑑定の依頼があった。 同日、宮崎家畜保健衛生所の家畜防疫員(獣医師)が当該農場の立入検査を実施したとこ ろ、症状がある牛が1頭のみで、現時点では感染力が強いといわれている口蹄疫とは考えに くいため、経過観察とした。(ソース)
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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1316537661/388-393 京介×桐乃 ※マジキチ注意! 「うお」 「きゃあ」 階段を降りて来る妹の桐乃とぶつかり、妹のバッグの中身が玄関口にぶちまけられる。 必死で中身を回収する桐乃を手伝おうとしたら 「くんな、キモ」 と煙たがる始末だ。 おいおい実の兄にその態度はないだろう?と思ったが実の兄だからか、と猫被り上手の妹だから仕方ないと諦めるしかねぇな。それからしばらくしてだ。 自分の部屋に戻ろうとふと玄関口をみるとなにかが転がってあるのが見えた。 それを拾うと俺は硬直したね。なんせそれはぶよぶよしてて真ん中に穴が貫通していたんだから。 「オナホール…」 その言葉が口に出る。そうなのだ。どういうわけか俺の家の玄関口にオナホールなるものが転がっていたのだ。 すると がちゃ 「京介、…なにしてんの?」 母親がドアを開けるや否や咄嗟に俺はその物体を抱え込みだんごむしみたいにまるまった。 「いや、なんでもない」 「あ、そう。変なものはエロ本だけにしてちょうだい」 「なぜそれを!?」 母はそのまますぎて行く。 一体、このオナホールは誰のなんだ? うちにあったってことはやっぱりうちの誰かということになる。 俺はもちろん違う。記憶喪失でもないかぎりな。 ということは…いや、まさかそれはないだろう。 だが、このまま放っておくわけにもいかず俺は夕食時にかまをかけることにした。 食卓にて 「あー俺の友達にシスシスキツキツ貫通型の愛好者がいてな」ちなみにそれはあのオナホの名前だ。 「…いきなり何の話だ?」けげんそうな父。 「さぁ、なにかしらね?」と母。 あれ?本命の父の反応は淡泊なものだった。 と 「ご、ご馳走様…」席をたつ桐乃。 「あら、まだ半分も残ってるわ」 「い、いらない…あ、あまりおなか、へってないの…」 まさかの妹!? いやいやまさかな。だが念のために 「あーご飯くったらコンビニいってガリガリ君買いに行くかな、と。」わざとらしくいう。 ちらと桐乃の視線を感じたがきのせいではないだろう。 一旦、家を出てこっそり俺の部屋に戻ると物色する妹の姿があった。 「捜し物ってこれか?」 桐乃が脱兎のごとくオナホを奪う。 「まぁ、事情はきかねえがもうあんな失敗はするなよ」 「ねぇ…」 「ん?」 「わたしが例えばこういうものが好きだとしたら笑う?やっぱり変だよね…」 「笑わない」 「え…」 「いいんじゃねえの。最初はびっくりしたが趣味はひとそれぞれだ。誰かに迷惑かけなきゃ、べつにいいんじゃねぇの?」 「…そっか。」 と桐乃はどこかほっとしたようにオナホ片手に自分の部屋に戻っていった。 深夜、爆睡していると桐乃に起こされた。 「ふぁ、なんだよ」 「人生相談」 「え?」 「人生相談があるの」 「わかった、わかった。それがすんだら寝かせてくれよな」 ここで安請け合いしたことで俺の人生はとんでもないことになったわけだが寝起きの俺にそれを知る術はなかった。 桐乃の部屋にて 「……」呆然とする俺。 「どう♪すごいでしょ☆これはヒダヒダの貫通型でこれはマジキツキツのロリ型オナホ、この重量感たっぷりの据え置きオナホは洗うのが大変だけど威力がやばいんだぁ♪……」 次から出るわオナホの賛美歌。 俺はとある疑問を呟かずにはいれなかった。 「女のお前がどうやってオナホ使えんだよ!」 桐乃は説明し実演した。 「感応型双頭ディルドって知ってる?これなんだけど…」二つペニスが合体したディルドを手にとる桐乃。 「これを…あたしのあれに入れると…あっ、ああんっ…」ごく… 妹がディルドの片方をじぶんの性器の中にくちゅっと挿入した。すると 「うお…」 もう片方のディルドの端の表面が波打ち内臓のような肉感に変化した。 「ディルドが触れている情報をもう片方に伝達することで形状をかえることができるの。」 つまり… 「そう。今見えてるこの部分はあたしの膣の表面なの。そして情報は向こうからも送られてくるの…だから」 と、ローションを並々と湛えたオナホを桐乃はディルドの露出してるほうに被せた。 「こうするとオナホを楽しめるの…あっ、あぁん…」 桐乃はオナホを動かし始める。 桐乃は俺にオナホを勧めてきた。 「はい、まずはこの10本を貸してあげるから感想をお願いね」 「へいへい」 「あ、それと」 あの双頭ディルドを渡される。 「これも使ってね」 「どういうことだよ」 「どうもこうもないわ。あんたのアナルにこれを刺してオナホを使いなさい。絶対に前で使わないでちょうだい」 なにその変態プレイ。 だが、そんなに悪くなかったのには我ながら驚いたぜ。 幼なじみの助言をもとに桐乃のオナホ友達を探すことに。 「オナホ大好きっ娘?」 「そ。わたしみたいにオナホ大大大好きな女の子たちの集まりなのよ。次の休日にオフ会があるんだけど…」 「分かったよ。ついていけばいいんだろ?」 秋葉原にて 超興奮する桐乃。うげぇ。いたるとこに新作オナホのチラシがある。胸やけするぜ。 オフ会はいたって普通だった。メイドカフェに集まってオナホ談義をするだけだ。 しかし、桐乃はいまいち中に入れずにいたみたいだ。どうやらほとんどの娘はオナホと自らのまんこを合わせる貝合わせのがメインだからだ。 しかし、この会の主催者には吹いたな。 チャットじゃ拙者ござるよ口調だったのに現実じゃあたくしですの口調だもんな。しかも超絶美女ときた。ぼっきんぼっきんを押さえることはできねえぜ! オフ会の一次会が終わり悄然とする桐乃と連れ立って秋葉原見学に行こうとするところを主催者の沙織がひきとめた。 なんでも一次会に話があまりできなかった娘をあつめて二次会をするという。俺と桐乃は参加することにした。 二次会の他の参加者は黒猫というHNの黒髪の色白美少女だった。 二次会は愛用のオナホを使用するところを相手に見せ付けるというイベントだ。そのため他の参加者たちは各々でグループを作り、ラブホで技量の限りを披露することになっていた。 俺達もラブホに入る。受付のおっさんが中高生の女子を3人引き連れる俺に羨望の眼差しを送っていたな。 俺達はシャワーを浴び(残念ながら俺だけ別で浴びた)、ベッドでバスローブ姿となった。 桐乃と黒猫は互いのオナホをけなしながらオナホオナニーし始めた。 「あいつら喧嘩してばっかだな」 「うふふふ、あたくしにはとても気が合うように見えますわ」 俺は沙織のまんこに挿入した双頭ディルドの片方に挿入された貫通型ロングオナホに同じく俺のアナルに挿入した双頭ディルドの片方を挿入しながら 「そっか。しかし、このオナホすっごくきもちいいな」 「あたくしの自慢の自作オナホですもの。それにしてもいつもこのような方法で妹さんとされてるんですか?」 「まぁ、な」 「変態なお兄様なのね。これはどうかしら?」 そういうと沙織は俺のアナルに挿入されたディルドを抜くと自らの双頭ディルドの片方を俺のアナルに挿入した。 「うおぉぉぉ!?」 「どうかしら?あたしのおまんこは?」 「すっごくいいです!!」 双頭ディルドには先史文明のオーバーテクノロジー使われているともいわれ、触れた表面の形状を再現するだけでなく、温度質感はおろか、分泌液までも透過してしまうのだ。 俺の大腸は沙織の柔らかさや温かさに蹂躙されながらもディルドから滴る分泌液を吸収するのをやめない。それでいて超が沙織の膣に包まれているという感覚もするからやばい。 「さらぁにぃ、この新型感応型オナホでぇ」 と三股にわかれたオナホを取り出すと俺の勃起チンポに挿入した。 「そこのお二人さん。ちょっとこのオナホに挿入してくださらない?」 と一本の双頭ディルドをまんこにいれレズセックスしていた桐乃と黒猫が各々双頭ディルドを装着し、三股のオナホに挿入すると 「はうわあぁぁぁぁぁぁ!」 とてつもない快楽が俺のペニスを襲った。 説明しよう。新型応型オナホとはオナホに包まれた物体の情報を他の二つの穴に伝達しさらに二つの穴の情報を受信するというもので イママサにおれは桐乃に初挿入しつつ黒猫にも初挿入を果たしたのだ。ふたりの膣の感触が快楽を何倍にも高める。 こうして桐乃だけだはなく、俺にもオナホ友達が出来たのだった。 数日がたち 学校から家に帰るとリビングで桐乃と父親が争っていた。 テーブルの上にオナホと双頭ディルドがおいてあった。 リビングでしてるところを見つかったようだ。 母「きっとこれならお父さんの機嫌も少しはよくなるわ」とペペローションを手渡される。 「感応型双頭ディルドってんはすごいやつなんだ!大腸で女の子のおまんこを楽しめるんだ!」 俺は父親にそれを試す。 父、今にもとろけそうな快楽に我慢。 全裸の父のアナルに挿入した双頭ディルドの片方を自らのまんこに挿入した全裸の桐乃はおっぱいを押し付けたり、脚を絡ませたり、耳たぶを舐めたり愛撫するがまだ足りないらしい。 「感応型オナホなんかほら実の娘のおまんこを味わえるんだぜ」 と父は娘の膣に挿入した双頭ディルドに挿入してあるオナホにちんぽを挿入すると娘の膣に包まれた感覚に陥り遂に墜ちた。 「ふははは、許す許す!」
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246 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 04 12.05 ID ZqEP/v7T ────────最近よく眠れない。 連日に渡って記録を更新する、記録的熱帯夜の持続がまた一つ日をまたいでの朝。 「よぅ。起きたか?」 粘るように湿った、不快な熱気の中で目が覚めた。 全身がダルく、意識が重い。 「・・・・・・・・・」 視界を開くと、所々が明るく照らされた室内が映り込む。 じっとりとした静寂を乗せた空気が、差し込んで反射する光に熱を上げ、シミのついた天井が白く塗られていた。 早朝から押しかける陽気に室温がじりじりと上昇し、夏の夜明けを遅れて知らせてくれる。 室内は眩しい程に明るく、部活の朝練やラジオ体操があれば、果たして間に合ったかどうか。 「朝だぜ、アニキ」 起き抜けの意識が醒めるまで数秒、緩く眼球を巡らせるうちに、片腕の異変に気付いた。 隣からの声。 熱のある重さが、鈍く左腕に痺れを置いている。 「お?」 首を左に傾けて、発見。 視線が絡み、合わされた焦点に、呼ばれていた意識と肉体の現実が結びつく。 薄手の布団をどけると、相手は乗せている頬を緩ませてから、何故か笑った。 「起きたか? ・・・・・・寝惚けじゃないな、起きたか。今朝も早起きで助かるぜ」 ボ ク 一人用であり男物の布団を掛けただけのベッドの上。 下ろしていたはずの兄の腕を横にして敷き、 肘の裏に頬を、上腕に手を添え、体をこちらに向けている妹。 目鼻の先にある顔が機嫌よく猫のように笑み、 微かな身じろぎに合わせ、くしゃりとした茶色い短髪が僕の腕を擦る。 笑いながら細められた目は、それでも閉じずに、じぃっとこちらを見詰めていた。 「イスミか」 「おうよ」 呼ばれ、1つ下であり1人だけの妹、衣澄(いすみ)が応じる。 問いでもない僕の声に、律儀かつ涼やかに答(いら)えが返った。 「おはようからおやすみまで暮らしを世話する、揺り籠の時から墓場の先まで永遠の妹。 我が家の長女にして最年少、アニキのイスミこと────────アタシだぜ」 そんなことを言って。 男のように頬を吊り、にっかりと、日向(ひなた)の笑みを妹は浮かべる。 寝巻き代わりに貸してやっている────強奪されてそうなった────男子制服の白シャツが、衣擦れの音を立てた。 遅れて口元に手を運ぶ所作は少女のそれで、 それが羞恥によらない意識と、まだ伸びきらないような腕の細さが、少年の性を匂わせる。 247 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 05 37.77 ID ZqEP/v7T 「ふっふ」 どこかで聞いたようなセリフに続くのは、 反応を見ながらの誇らしげな、悪戯と得意気を噛んだ笑い。 少年染みた稚気が覗くのに嘆息を返せば、妹は手を下ろして破顔した。 花の美しさではなく、この季に咲く向日葵のような、燦燦とした陽気が暑気を払う。 「おはよう」 「うん。実におはようだぜ、アニキ」 言って眩しさに顔を背けると、我が家の二階奥の子供部屋、対岸の壁沿いにもぬけのベッドが鎮座していた。 剥がされた、のではなく内部から蹴り上げられたらしい布団が歪な“へ”の字に凹んでおり、 伸ばされないシワが、持ち主の気質を見る者に訴えている。 「またかい?」 「まただぜ?」 左のイスミではなく逆の右、壁に向けた声の反射に即応の答え。 外見の熱に比べて冷ややかな手指が、痺れたままの僕の腕をぐりぐりと弄った。 文字ではなく何か即席の図形を描こうとして、細部を忘れたか飽きたかですぐに止めてしまう。 離された人差し指は、かと思うと中指を添えて、兄の寝巻きの袖を摘んだ。 「昨日までと同じく、明日からも続く毎日のように。 今日のアタシもアニキの目覚めを助けに来たぜ。さあ褒めてくれ」 こちらが苦しくない程度に、引っ張って催促する。 その声はお遣いを済ませれば駄賃がもらえると疑いなく信じている子供のようで、 ねだるための甘さや媚びはなく、無邪気さの響きに占められていた。 「ヤればデキる子、元気の子。 頑張った妹を褒めるのは兄の義務、褒められるのは妹の権利さ。 アニキは知らないかもしれないが、何を隠そう、アタシは褒められて伸びる妹(タイプ)だ」 「知ってるよ」 「お、そうだったか? 流石アニキだな。へへ」 頬でも掻き始めそうな、仄かな照れに浮ついた声。 「でもさ。じゃあ、ほら」 ごろ、と。 妹が身を転がし、痺れのある腕から重さが消えた。 思わず戻そうとした顔に途中で影が落ち、重さに代わる圧力が心臓に置かれる。 「知ってるんなら、今日もさ。いいだろ? アニキのアタシへの愛は減るもんじゃないし、アタシのアニキへの愛は増えるんだからさ」 見れば。 衣擦れの音も、シャツが引かれて覗きそうになる肩も、その下も気にせず。 僕の胸に左手を添えたイスミが、甘えた視線を落としていた。 マット上の右手と合わせて上体を起こし、 兄の片足を両膝でホールドしながら、微かに息を吹く。 「な?」 上目遣い、ならぬ落とし目遣い。 湿った吐息のかかる距離、僅かに下を向けば微かな膨らみが見える位置。 落ちそうになる瞳を持ち上げるのは────────兄か男か、きっと『何か』の意地だろう。 248 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 07 25.53 ID ZqEP/v7T 「・・・・・・・・・増えるんだ?」 呑んだ息を肺に詰め、誤魔化しと、間を稼ぐために問えば。 「増えるぜ?」 迷いのない返答に戸惑う。 どうしたものか首を巡らそうとして、 胸に置かれていた妹の片手が外され、かと思うと倍になって枕ごと押さえられた。 「じーらーすーなーよーーー」 掴んだ枕を左右に振る、悶えるような揺れながらの抗議。 ゆらゆらと言うよりはミキサーのように頭ごと視界が振られ、股下に置かれた妹の片膝が股間に擦れる。 流石に限界だった。 「わかった、わかったから」 「ほんとかぁ?」 答えようとして、問答を重ねればまた焦れかねないと思い、口の動きを手に替えて伝える。 「へへっ」 期待の視線を落とす瞳に指先を伸ばし、ほんの少し、頬を撫でてから横へ。 くしゃくしゃした茶染めの短髪に、手櫛を挿して掻き混ぜてやる。 突風の中で乾燥させたような波形の髪を持つ妹だが、 見た目に反して枝毛なんかが絡むこともなく、指先は抵抗を受けずに頭皮を撫でた。 「んぅー」 いつもの様に髪を擽ってやり、 いつもの通り頭を掻いてやる。 愛撫というにはやり方が荒く、ぞんざいと言うには印象が弱い、じゃらす程度の手遊びだけど。 「イスミ。今日もありがとう。・・・・・・こんなところでいいかい?」 それを受け、要請した形で褒められる妹はと言えば。 「はっはー」 許可を待つために添えられたままの兄の手を取り、何故だか、挑戦的に笑うのだった。 「アニキはシャイだけど、最終的には素直だな。そういう所は大好きだぜ」 ちなみに。 妹から僕への人物評のボキャブラリーは、『好き』と『大好き』と『好き好き大好き超大好き』しかない。 1人の人間として当たり前に存在する兄の短所には、本人曰く『嫌よ嫌いも好きのうち』、だとか。 「・・・・・・・・・」 朝から思春期同士の兄の布団に入ってきたり。 わざわざ兄に褒めてとねだったり。 キス寸前の距離で平然と会話を続けたり。 ■■■したり。 思うに家の妹は、きっとどこか────────とても危ない。 そう思考を重ねると、昨日までと明日からのように、今日も。 ようやく枕元で、遅れた目覚ましが跳ね起きた。 249 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 09 26.77 ID ZqEP/v7T おおよそ休日のみを例外とする以上の様な遣り取りに関して言えば、 元々から僕は朝が弱いので、早寝早起き体育会系の妹に兄起こしの指令が両親より下されたことに始まる。 とは言え、我が父母からして週5日勤務体制をかれこれ数年に渡って妹に継続させるつもりはなかったはずで、 だとすればそれはむしろ妹が望んでやっていることだし、起こされる僕としてもそうだろうと思うが、 そういった点から考えれば、ある意味においては妹の異常っぷりが理解し易いだろう。 家の妹は鳶が鷹を産む、 いやむしろ寄生したエイリアンが腹をぶち抜いて産声を上げたかのようなパワフルさを持つ人間だが、 同時に兄から送る人物評としては、パワフル以上に『誠実』なのがこの妹だった。 思春期にもなって反抗期に突入する風もなく、趣味は運動、主食はお米、 (頭脳以外は)成績優秀天真爛漫。 そんな、画に描いた餅の世界にいるヒーローのような女傑が。 ひどく真っ直ぐな反面、兄としては見ていていつも危なっかしい。 ・・・・・・・・・危なっかしいだけで、実際に危ない目に遭っている場面はお目にかかったことがないけれど。 何せ少女に少年を足したような容姿と性格のくせに、 馬力だけはそこらの少年(のごっこ遊び)ヒーローの10倍はあるやつだ。 僕が初等部の中学年に上がる頃には低学年の妹の方が喧嘩が強かったし、 そんな時分に言いつけられた、 『イスミちゃんは強い子だからね。 イジメられてる時には、イスミちゃんがお兄ちゃんを助けるのよ?』 という言葉に対し、 『わかった! やつざきにする!』 と真っ先に兄のプライドを破り裂いてくれた存在でもある。 故にこの場合、実力の問題ではなく、 そう言い付けられれば仮に人並みの腕力しかなくとも命令に従っただろう実行力を僕が確信できることと、 そのような言いつけ類を未だに守っている妹の精神性をこそ、異様とすべきだった。 家の妹の特徴、『兄が好き』。 妹が両親から指令を受けたのも、それを継続しているのも、おそらくはそのため。 その一、とかナンバリングをして順序立てるまでもなく。 僕から見た妹の異常性は全て────────この点に集約される。 夏の最中、眩しい朝日に熱を上げていく通学路を兄妹で歩く。 「ふー。食った食った」 学生鞄を持った右手を肘から上げ、手首から先を反らし、 まるで不良がするような持ち方で今日の教材を肩と背中に乗せた妹が、左手でお腹を叩きながら前を行く。 「本当に。毎朝毎晩、よく食べるね」 今朝の食事はサラダに味噌汁、目玉焼き、ウィンナー、 白米を一膳と和洋折衷の一食分を済ませてから牛乳を飲み、更には焼いたトーストをバターで二枚。 いつもと変わらない健啖さも慣れたもので、兄としては妹へ思うところもあるけど、 その子供らしい食欲は家族として見ていて微笑ましく、声をかけるにも喜色が浮かぶ。 250 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 11 40.25 ID ZqEP/v7T 「成長期だからなっ。 アタシはまだまだ育つぜー? 超育つぜー?」 かけられた声に、ぱっとイスミが振り返る。 ステップを踏むような軽快な動きに遅れ、履いたスカートの裾がふわりと広がって落ちた。 にしっ、と、また性に似合わない、 だけど妹の顔には馴染んだ笑みを浮かべてから、どうしてか楽しそうに口を開く。 「その時はアニキに揉ませてやるよ。むしろ揉んでくれ」 「ぶっ!?」 噴き出す。 家の妹は少女だけど少年のようで、そして少年そのままに性に関して遠慮がない。 性別はきちんと女の子でありながら、そんな自分を、まるで男同士のノリで出してくる。 「止めなさい。 イスミもいい歳なんだから、そういう言動にはいい加減に気をつけないと」 「お? 何だ何だ、アニキも『そういうことは好きな人と』っていうクチか?」 「それは・・・・・・そういうことを話したりしたりするならね。 年頃なのは分かるから興味を持つのは止めないし、何かあれば相談にも乗るよ。 こんな兄で力になれるならだけど」 「ふーん。アニキは寛大だな。かーちゃんなんかは最近うるせーのに」 それは年頃の娘がこんな言動してたら当然だと思う。 お前は知らないだろうけど、母さん、 お前のいない所じゃ途方に暮れて父さんとお前が嫁ぐ時のこと相談してるからな。 ────────正確には嫁に行くんじゃなくて婿を迎えることで一致してるけど。 「流石はアタシ、今日もアニキに愛されてるぜ」 親の心子知らず。 繰り返すが、親の心子知らず。大丈夫、僕も味方だよ母さん。 「けどな」 「ん?」 炎天下に鈍く、ドサリと鞄の落ちる音。 不意に。 するりと近寄ったイスミが開いた両手を伸ばし、こちらの頭を抱き寄せようとして。 「んー」 座りが悪かったのか身長差が辛かったのか。 一旦手を離し、そして何事もなかったかのように抱きついてきた。 動作自体が一瞬で抵抗できず、 しかも気付いた時には脇や横腹ではなく僕の両腕ごと体をガッチリとホールドされ、 乙女らしからぬ力で兄の抵抗ごと封殺している。 と言うよりも、腕力ではなく関節を極めるように、力を入れる場所に密着されて解(ほど)けない。 分かってはいたけど流石イスミ、恐るべし妹ホールドだ。 「アニキがアタシの力になれないなんて・・・・・・なってないことなんてないさ。 アタシはアニキがいれば100人力だし、アニキのためなら100万馬力だ」 「それはまた凄い力学が働いているね」 「代わりに、アニキがいないと力が出ないけどな! 愛と勇気が友達で、アニキだけがアタシの愛する人なんだぜ?」 妹が笑う。 屈託なく、迷いなく、朗らかに。 それはこの夏の太陽のように眩しく、何より嘘がない笑顔だった。 251 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 14 50.23 ID ZqEP/v7T 「だからこの胸だって、どうせならアニキに育てて欲しいのさ」 嘘のない笑顔で────────ホールドを解いた妹は、 こちらの鞄を持ってない方の手を取り、自分の胸に当てる。 「ちょっ」 慌てて離れようとするが、離れる以前に手を放すことさえできない。 おまけに、飛び退こうとした足先もいつの間にか妹の靴に踏まれ、離脱を封じられていた。 どこの漫画だ。 「いっしっし。アニキは純情だな」 ニヤニヤと悪ガキを思わせる表情で、 ぐいぐいと兄の手を己の胸に運んで押し付ける妹。 まだ薄く、押すとすぐに硬さに触れる部分が、それでもほんの少しの柔らかさを伝えてくる。 ついでに言えば、胸骨ではない固さの突起物が2つ、兄の手に触れた。 「それと。 アタシを呼ぶんなら『お前』じゃなくて『イスミ』、な」 何とか引き剥がそうと息んだり踏ん張ったりする兄の奮闘を流し、涼やかに告げる妹。 見上げてくる瞳、いつも嘘のない表情の顔がほんの少しだけ冷めてから、再びぱっと華やぐ。 「アタシはいい子だけど思春期だからな。 ちゃんと名前を呼んで可愛がってくれないと、 グレてアニキにだって噛み付いちゃうんだぜ?」 「ペットかい!」 「アニキが望むならにゃ。にゃははー」 あと噛み付くのは犬なんだから泣き声は統一しなさい! 「それよりも、いい加減に放さないと・・・・・・!」 「おお、そうだった────────ほい」 「うわっとっとっと!?」 奮闘の甲斐あって────そう思いたい────ようやく自由になるマイハンド。 しかしいきなり開放されたのは込めていた力も同じで、 勢い余って背後に倒れようとするのを渾身の力で踏ん張り、 何とかブリッジをやろうとして途中で急制止したような姿勢で留まる。 背中、いやむしろ腰が痛い。 「お前なあ!」 「あー、また言った。ちゃんと呼んでくれないとリテイクでもう一回だぜ? アタシは構わないけどな。さあ、何度でもアタシの胸を揉むがいいぜアニキ!」 「む」 覆せない力関係を再現される可能性と、妹の無駄な熱血のおかげで頭が冷えた。 替わって炎天下の運動で噴き始めた汗に視界が滲むが、この際、 通行人が痛々しい視線を投げてくる姿もぼかしてくれるのでよしとしよう。 「・・・・・・イスミ」 「なんだぜ?」 冷静になるべく天を仰ぎ、溜息を吐く前に瞳を熱線に焼かれて顔を戻す。 お天道様が見てる、と昔の人は言ったが本当なら恥ずかしさで悶死しそうだった。 252 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 18 32.12 ID ZqEP/v7T 「理由はなんでもいいから、さっきみたいな言動と、 特に他人に胸を触らせるような真似は控えなさい。分かったね?」 「了解であります!」 元気良く、挙手式の敬礼で応える妹。 「けどアニキから求められたらいいよな?」 拳骨を振り下ろす。 「分かったね?」 「むー」 頭を殴られて痛い、と言わない辺りが妹の強度証明だった。 「分かったね?」 「あーもうっ、分かった分かった。分かってるって。 YESシスター、NOタッチ。触らせません初夜までは。それでいいんだろ?」 「・・・・・・はぁ」 全く分かっている気がしなかった。 「本当に駄目だからね?」 「大丈夫だよ。もうしないって。 アニキに怒られるのが、アタシには一番恐いんだからな」 何故か晴れやかな顔で自信満々に言って背を向ける妹。 落とした鞄を拾った二歩目にはふんふんと機嫌よく鼻を鳴らし始める。 兄としては。 妹の口にしたそれが真実、理由になることこそが、むしろ一番恐かった。 まだ明るい夕方、放課後の空気と校舎を背に、帰宅する学生の群れに混じる。 「お疲れ、アニキ」 校門を出たところで、妹から自然に声がかかった。 もたれかかっていた壁から背を離し、兄の隣へと歩み寄る。 「相変わらず早いね。・・・・・・待たなくていいのに」 「アタシが待ちたいだけだから、アニキは気にしなくていいんだぜ?」 夏の夕刻は日没にまだ遠く、十分に強い日差しの中、妹は朝と変わらない眩しさで笑みを浮かべた。 妹と僕とでは、通う場所の経営は共通でも学び舎が違う。 妹は三年、僕は一年。ただし、教育課程における中高の等級が別だった。 そのせいか、いや、それなのに、 放課後の訪れが早い妹が兄を待ってから帰る構図が、すっかり日常になっている。 「じゃあ、帰ろうか」 「おう!」 帰り路を、兄妹2人で歩いて行く。 「それにしても暑いね」 「まったくだぜ」 253 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 21 31.57 ID ZqEP/v7T 朝早くに昇った太陽は、まだしばらく地平線に触れる気配もない。 それでも傾いた角度のせいで光が顔によく当たり、 学び舎の熱気から開放された頬に額に、早くも汗が滲み始めた。 一方で同意した妹の見た目は涼やかなもので、 やれやれとでも言いた気な語調にも、疲労や倦怠の重さはない。 この快活で活発な妹も汗をかく程度には普通の人間だけれども、 体力の違いか体質かそれとも気力なのか、 同じ汗に塗れても、不思議とさっぱりした印象を損なわない存在だった。 「熱帯夜も続くしね」 「だな。寝苦しくてかなわねえ」 夏場に入ってからというものここ数年の猛暑は依然として継続しており、昨夜も気温は高く、 エコ、節電と共に健康や夏風邪対策を利用とした冷房の温度制限を設けられた兄妹部屋では、 連日の真夏い睡眠時間が続いている。 兄妹の寝起きは同じ部屋であるかして、上げる不満も共通だ。 どれだけの熱帯夜に見舞われても妹の元気は変わらない、という違いはあるけれど。 この季節の深夜に毎日起き出して体調を損なわない頑丈さが、妹の個性の一つである。 ────────寝苦しさで言うなら僕の方は暑さによるものではないし、 今時にひどい寝汗をかかずに済んでいるからまだマシ、という見方もあるが。 「・・・・・・う」 嫌な記憶を思い出して背筋が震える。 妹の視線が前を向いていたおかげで、見咎められないのが幸いだった。 「今日はどうだった? 授業とか、休み時間とか」 勘の働く妹に察知されるのも困るので、自分から意識と空気を変えて話題を出す。 別に誤魔化しただけでもなく、実際に気になることでもあった。 「んー? 別に。普通だぜ?」 「普通って。前に聞いた時もそうだったじゃないか。おま・・・・・・っ、イスミも学生なんだから、 授業のこととか友達のこととか、それなりに話すこともあるだろう?」 「いやー、アニキに話すほどのことなんてないぜ? マジでマジで。時間の無駄だし」 これである。 母親ならずとも、性意識に関してでなくても、家の妹の心配なところだった。 妹は語らない。 兄と、自分以外のことを。 精々の例外は家族である両親のことくらいで、不思議と妹が口にするのは兄と、自分のことだけだ。 本当に不思議なくらいに。 妹は、『他人』を語らない。 興味がないというよりも。 生きていれば嫌でも目に付く存在を、そうしようと意識もせず無視するそれは、 まるで最初からそれに価値がないと思っているかのようだった。 兄より一つ年下の、一つ下の教育課程で、妹はどんな日々を過ごしているのか。 傍にいない今、過去からの距離は遠くて、思い出してもあやふやな像しか描けない。 半年ほど前までは、僕も確かにそこに居たのに。 だが思い返してみても、当時から妹との会話に変化がない事実に、今になってぞっとすることがある。 普通に考えて、学生なんて同性の友人と放課後を共にしたり、兄や姉のことなんて煩わしく思って当然なのに。 254 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 24 36.26 ID ZqEP/v7T 「そんなに気になるか? アニキが。アタシの授業態度とか交友関係とか」 「妹のことだからね。兄としては当然だよ」 「ふーん?」 ボリボリと。 年齢に似合わない頭の掻き方をした妹が僕を見上げ、 何かを探ろうとするでもなく、本当にただ見詰めてから破顔した。 「気になるんだ。へー、ふーん。 アニキってばアタシのことが気になるんだ。へへっ」 「ごめん。今どうしてそんな反応をされるのかの方が気になってる」 「何でもないぜ?」 向けられたニッコニコとした笑顔には、思いっきり『何でもある』と書いてあった。 たまに、この妹は喋らせるより顔を見た方が早い。 「まあでも、他ならぬアニキに気になると言われちゃ仕方がないなっ。 アニキに隠し事なんてするつもりないし、アタシにはアニキに見られて恥ずかしいところなんてない! よしアニキ、何でも聞いてくれ。ちなみにアタシは処女だ」 「し────────いや、聞いてないから」 何を思ったか途端にテンションを上げて寄ってくる妹。 兄の横に並んで分かりやすくぶんぶんと手を振って大仰に歩く。 『知っている』と、そう言いかけたのを知られずに済んだのだけがよかった。 「で? 何が聞きたいんだ? アニキのためなら何でも言うし、 秘密の話だったらこのアタシ、閻魔様に舌抜かれようと喋らないぜ?」 「いや、そこまでしなくていいけれど」 この妹、少なくとも僕の前で口にすることは大体本気だから怖い。 一々、好意と覚悟が壮絶に過ぎる。 あと閻魔様は嘘を吐いた時にそうするはずだから、 沈黙を貫きたい相手にそういう拷問をするわけじゃないぞ? 妹よ、人間は舌がなきゃ喋れないんだ。 「そうか・・・・・・アタシも、舌がなくなるのはちょっと困るからな。 あんまり重大な秘密でないなら助かる。で、アニキはアタシの何を聞きたいんだ?」 「ん? ・・・・・・ああ」 なんのかんので、気がつけばいつの間にか妹に喋らせるのではなく、 こちらが何を聞きたいのかという目的を晒す流れだった。 妹の普段の級友との遣り取りなんかが知れればそれでよかったのだけど。 考えてやってるのでも天然でこうなるのでも、どちらにせよ恐ろしい妹である。 「そうだね。特にこれ、と決まって聞きたいことがあったわけじゃないんだけれど。 それじゃあ、イスミもいい歳だし、女の子なんだし、クラスのことも含めて恋愛事なんかは?」 「興味ねー」 即答で一刀両断だった。 「え? なに? アニキそんなこと聞きたいのか?」 げんなりした顔で落とされる両肩。 歩幅が一気に短くなり、目に見えてテンションが下がっていく。 ある意味では態度から表情から、生粋の正直者だった。 255 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 27 10.41 ID ZqEP/v7T 「あー、でも『アタシの恋愛』が気になるのか・・・・・・? ふむ? うんうん。どうしてアニキが?」 「思春期じゃ一番多くて大切な話題だし。繰り返すけど、妹のことだからね」 下落したテンションを何とか回復させて質問を飛ばしてくる妹。 思えば兄妹でするにはデリケートな質問だった。 それにしたって、本気であんな反応をされるとは思っていなかったけど。 「なんだ。そういうことか・・・・・・・」 そしてまた落ち込む妹。 ただしさっきより復活が早く、すぐに上げた顔を向けてきた。 「うーん。けど本当に何もないぜ? イケメンがどうとか、やっぱり付き合ったり人を好きになったりしないといけねーとか、 アタシそういうのに興味なんてねーし」 「だろうね・・・・・・」 聞いておいて同意できる自分が恨めしい。 「? 変なアニキだな。へへ」 首を傾げて笑う妹。 敗北を喫した兄の顔を、そんな愉快な表情で見ないで欲しい。 何がおかしいのか、機嫌と歩調を取り戻した妹は僕の隣から前えと行き、 ふと立ち止まると夕暮れには明るい太陽を背に、ぱっと振り向いて微笑んだ。 「────────でも」 それから、兄の顔を見ながら後ろ向きに歩き出して。 「アニキがアタシのことを心配? してくれるのは嬉しいけどさ」 手を後ろに回し、腰を曲げ、普段より見上げる姿勢を取って。 やはり夏のような向日葵のような、曇りない爽やかな笑顔を満面に浮かべた。 「アタシはアニキの世話で忙しいからな。 ううん、それで忙しくしていたいのさ」 真夏の帰り道。 その姿はしっかりと照らされ、陽炎もなく確かで。 「だからアタシが興味あるのは、アニキのことだけだよ。 これからも、生まれてから死ぬまでずーっとな」 そんな、年頃の女子にはあるまじきことを言って。 嘘もなく、妹は笑っていた。 そんな妹の、変わらない、似たようなフレーズで繰り返してきた告白を受けて、僕は。 ああ、やっぱり。 我が家の妹は、真っ当な思春期の中にいないと。 そんなことを、思う。 256 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 31 29.89 ID ZqEP/v7T そして────────夏の夜が来る。 帰宅して、時間を潰して、妹も手伝った夕飯を家族で囲んで、食べ終えたらまた時間を潰して。 合間に家族や妹との会話を挟みながらそんなルーチンを済ませた僕は、 明日は少し早いらしい両親の後、妹より先の順番で浴室にいた。 「・・・・・・」 夏の夜の、こもったような空気の中、シャワーの立てる水音が耳を叩く。 低い天井から投げられる光と、ツルリとした壁に囲まれた視界に、辺りを曇らす湯気はない。 風呂上りにはできるだけ汗を掻かずに済むよう、夏は水風呂に近い温さで浴びることにしていた。 「・・・・・・・・・」 ざっと頭髪を濡らし、シャンプーを塗りこんで頭皮を揉み、泡立て、一日分のケアをしてから十分にすすいで。 一旦シャワーを止め、自分の髪から体から零れ落ちる水滴を見詰める。 軽く頭を振ると、壁に叩きつけられた雫が弾けた。 一呼吸置いてから軽く顔を洗い、何となくさっぱりしたところでまたぬるま湯を止める。 世間では、風呂に入った時にどこから洗うかは色々とパターンがあるらしいが。 僕は(多分)オーソドックスに上から順に済ませる方だった。 ただ、もしも人と違う所があるとするなら。頭、顔ときて最後に。 体を洗う時だと思う。 「────────」 幾つか分けて置かれた石鹸の中から一つを取り、 表皮、正確には垢などを擦るためのネットに入ったそれを手の中で揉み、泡立てて肌に当てる。 ごしごしと。ごしごしと。 利き腕の右で握った石鹸を左腕に当て、肘から肩、手首の間を走らせて更に白い気泡を立てながら、 十分と思ったら肘やその裏、次に手首から先の手に。 引いては押して。 手相などの元になる~線、少しでも汚れの落ちにくい溝になりそうな部分を丹念に擦りたてながら、 指の先、爪の間までを意識して磨き上げる。 左腕が終わったら、石鹸を持ち替えて右腕に。 それが済めば位置を首に上げ、順番に下へと作業場所を落としていく。 首筋を赤くならない程度に擦り上げ、両肩を往復し、 自分ではそう生えていないと思う両脇をしっかりと立てた泡で包み、 体の前面は勿論、背中の方も交互に両手を伸ばして擦っていく。 最低でも、同じ場所を10回は擦るようにして。 「・・・・・・・・・」 他の場所の垢を十分に擦り、必死に立てた泡で一杯に包んで。 残された部分、自分の男性器と周辺を見下ろして手が止まる。 「どうなんだろう」 257 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 34 31.02 ID ZqEP/v7T これが大きいのか小さいのか、形状が普通なのか、自分ではよく分からない。 無修正のAVなんかを見るほどネットにはハマってないし、 これから機会はあるだろうけど高校に上がって今まで、誰かと見せ合ったこともなかった。 男性の魅力か、それに直結する要素の一つではあるらしいけれど。 正直、よく分からなかった。 「・・・・・・」 それでも、洗う。 丹念に、入念に、丁寧に注意深く。 刺激よりも、ただ清潔にすることだけを考えて。 洗って。 洗って、洗って、洗って、洗って、洗って。 洗って、洗って、洗って、洗って、洗って、洗って、洗って、洗って、洗って、洗って、洗って、 洗って洗って洗って洗って洗って洗って洗って洗って洗って洗って洗って洗って────────流して。 もう一度、頭から水のようなお湯を被って、 汚れも泡も何もかもすっかり流されるだけの時間を置いてから、シャワーを止めて全身を見ていく。 一頻(しき)り確認をして、当たり前だが目立った汚れや洗い残しがないことを実感してから、 ようやく人心地がつけた。 「ふぅ・・・・・・はあ」 心なしか酸素の薄く感じられる空気で何度か呼吸をし、握り締めていた石鹸を戻して────────傍にあるスポンジを手に取る。 さっきまでの石鹸とネットのように強烈に垢を落とすのではなく、もっと細やかに柔らかく、肌の汚れを取る物。 掌より大きく厚いそれをぎゅっと握り、シャワーをかけて汚れを取りながら湯に馴染ませていく。 十分に水分を含んだところで軽く絞り、 シャンプーやリンス類のボトル置き場から自分用のボディソープを出して塗り掛け、 奥まで吸ったタイミングで揉み込む。 すぐに泡が立ち始めたので、柔らかな面を肌へ当てた。 そうして、後は先程までの動作をもう一度、今度はゆっくりと優しく繰り返す。 腕を洗う。肘を洗う。手首を洗う。掌を洗う。手の甲を洗う。指を洗う。指先を洗う。爪を洗う。 首を洗う。肩を洗う。鎖骨を洗う。脇を洗う。背中を洗う。胸を洗う。腹を洗う。 尻を脚を、太腿を膝を、脛を脹脛を踝を足を、踵を指を爪を爪先を────────性器を洗う。 スポンジで擦るだけではなく、時には手にボディソープを乗せて、 広げた液を伸ばして馴染ませ、皮膚に直に塗りこんで。 僕は僕の肢体を洗う。 洗浄というよりも、儀式のように。 連日の猛暑と熱帯夜。 猛暑日なんて言葉が流行り、そして定着した夏という季節。 中でも昨年のそれから、僕のこの時期の入浴は長くなった。 原因は、ちゃんと綺麗にしておかないと熱帯夜では寝汗やそれによる臭いが気になるから。 家族にはそう説明しているし、嘘は、言っていない。 ただ、何でそれが気になるのかという、原因の原因を話してないだけで。 男子でも年頃の子にはそういうこともあると、理解されていた。 少なくとも両親────────妹以外には。 258 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 37 50.61 ID ZqEP/v7T 「アニキー」 「!?」 急に、風呂場の外の扉が開く音がして。 妹が────────イスミが、水滴に濡れた扉一枚の向こうに、立っていた。 「どうした?」 当然ながら、浴室の扉は内外を見通せる作りにはなっていない。 だから、びくりと跳ねた僕の背中は見られてないはずで。 平静に努めて、なんとか普段の声で応じられた、と思う。 「いつもよりちょっと長い気がしたから見に来たんだぜ。のぼせたりしてないか?」 「大丈夫だよ。もう洗い終わって上がるところ。待たせた?」 必要がないので、風呂場の向こうの明かりは消えている。 水滴をつけた扉の曇りの先、ぼやけた明かりを受けた影が、ゆらゆらと揺れて首を振った。 「ん。別にアニキの好きに入ってくれていいけど、 アナシも『アニキの後に』早く入りたいからさ。そんだけ」 「悪いね。今出る」 「了解。けど相変わらずアニキは綺麗好きだな」 「・・・・・・ただでさえ朝も夜も暑いし、汗臭いのは嫌だからね」 「アタシはアニキのだったら『汗臭いのも好き』だぜ?」 「僕が気にするんだよ。・・・・・・ん、終わった」 最後にシャワーをさっと浴びて洗浄を終えた。 反転すると、妹が出て行く気配。 扉────正確には二つ折りになる戸────を引き、脱衣所のスペースに出てタオルを手に取る。 (・・・・・・) ちらりと、横にある洗濯籠に目を落として。 風呂場から漏れる薄明かりに照らされた中身の一番上、入る時に脱いだ僕の上着。 そこに何の変化もないことに、今日も安堵する。 そうして夏の夜が深まる。 静寂(しじま)の中で、熱と闇を上げながら。 259 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 41 46.80 ID ZqEP/v7T ぴちゃぴちゃと、音がする。 真夜中の、とうに就寝の時間を迎えた部屋の中。 輝いた陽が熱だけを残して夜に呑まれた、 何処(どこ)をも見えない暗闇に、深夜にあるはずの静寂を破って水音が響く。 シャワーや雨のそれとは違い、小さくゆっくりとした、そして粘着質な液体の混ぜ音。 今日も夕方のニュースキャスターが声高に伝えた、記録的猛暑と熱帯夜の記録に入れられるだろう夏の晩。 夢幻に置いた意識を焙るような熱が、全身を舐めしゃぶる。 粘っこく、偏執的なまでに隙間なく僕を味わう人の舌。 真夏の夜気を思わせるこもった熱を吐き、はふはふと興奮で切れる呼気を漏らす唇から伸びた器官が、肢体を浚う。 つう、と糸を引いた唾液がまた一つ、僕に落ちて広がった。 「ああ、アニキ・・・・・・」 大きく服を乱された体の上から、熱情に焼けた声が落ちてくる。 やがて妹の手によって晒された肌の上に吐息が吹かれ、強く唇の感触が皮膚を這う。 吸い取るように唇がすぼめられて引っ張られると、次いで押し出された舌が兄の上を嘗め回した。 突くように触れさせた舌先を押し広げて回転させると一旦引き、口内に溜めた唾液をまぶして滴らせる。 「寝汗。取らないとな」 余った唾を啜り込む音が響くと、暗い声が静かに部屋の中を這った。 「暑いって、寝汗がひどいって言ってたし。 汗・・・かいたままだと、体に悪いからな。風邪引いたら、困るし。 アニキも困るよな?」 ごしごしと、腕で口を擦ってから呟きを漏らす。 言い終えた唇は、合わさると再び兄の上に戻った。 おそらくはまだ伸びきっていない手指が胸に添わされ、脚がこちらのものへと絡み合わされる。 「それで看病するのも、アタシは嫌じゃないけど。へへ」 兄の体に寄り添った妹が、ふぅふぅと荒い息吹を吹きかけてくる。 くすぐったさを押さえ込み、心臓と呼吸を落ち着かせるのが難しい。 「アニキのため」 「アニキのため」 先に垂らしていた唾液に、また舌が触れた。 舐めるようにして塗り広げ、その上からもう一度舌を乗せて、汚れを取るかのように擦っていく。 徐々に、下へ下へと向かいながら。 「・・・・・・んんっ」 時折、体越しに妹の震えが伝わり、 舌を出す口ではなく、股間の方からも粘った音が聞こえる。 「起きたら汗に濡れてないように。アニキが気持ちよく起きられるように」 薄い寝巻きの上をたくし上げられ、腰からはずり下ろされて。 普通ならどれだけ深く寝ていても起きるだろう、長く執拗な愛撫が続く。 (まだ終わらない、か) 心中で溜息が漏れた。 どうやら、今日も寝苦しい夜になりそうだ。 260 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 45 52.74 ID ZqEP/v7T 切欠は、幾つか前の夏。 続く猛暑による熱帯の夜に襲われるあまり、 ふと『寝汗がひどい。寝苦しくて困る』と、妹の前で漏らしたことによる。 それを聞いた妹は────────イスミは、自分もそうだと同意した後に、 『何とかしようか?』と尋ねてきて。 『出来るなら』、と。まだ妹の異常を完全には把握していなかった、兄の油断が始まりだった。 それから、不思議と寝覚めの悪い、けれど途中で醒めることもないない眠りが続いて。 どんなに暑い夜も、何故か起きた時にはひどい寝汗をかくことがなかった。 それで一つ二つの夏が過ぎ、『盛られ続けた睡眠薬』に慣れと抵抗が出来て、 夜毎の悪夢、妹のしていることに気付けるようになったのが、ようやく去年のこと。 夏の間は毎日毎日、兄の布団に潜り込み、寝具と寝巻きを剥いで、晒した肌を舐めしゃぶる。 唾液を塗布し、舌を出して、緩慢にじっくりと、時間をかけて隅々まで。 垢を舐めるという妖怪のように、兄の身に浮かんだ汗を丹念に舌先で掬い取って。 味わい、飲み込み、熱された吐息を吹いて恍惚に酔う。 最初の覚醒が、薬の効果の抜けきらない金縛りに似た状態でなかったら、 気付いた時の反射的な反応だけで全ては────────少なくとも僕と妹の間の何かは、終わっていただろう。 それくらい、訳が分からなかった。 「頼まれたからな」 こんな呟きを聞かなければ。 「アニキに頼まれたんだから・・・・・・アニキのことを頼まれたんだから、ちゃんとやらないとな」 家の妹に、悪意はない。 兄のことを好きすぎるのも、『他人』に興味がないのも、きっと妹には自然で、意識さえ働かない行為なのだ。 だからきっと、これも同じ。 兄に頼まれたからやる。兄のために。それだけのために。 方法を指定されなかったから、最大限自分にとっても好いようにしているだけで。 そこに悪意はない。 あるのはただ、どうしてこの方法を選んだかの、行為の理由があるだけで。 好意という。 ただそれだけで。それほどの。 「好きだぜ、アニキ」 かふ、と。 熱中のあまりの酸欠を思わせる喘ぎを経て、妹が告げる。 「好きだよ。好きだ。 言えないけど────────アタシは、アニキのことが好き」 夜の告白を、妹は朝には続けない。 何故ならこれは告白ではなく、誰にも聞かせてはいない独白で、 僕が起きているなど、妹は思っていなかった。 「結婚とか、色々とできないけど。 それでも・・・・・・好き」 以前、聞かれたことがある。 『眠っている途中で目が覚めたりしてないか?』と。 妹としても、最初こそ切羽詰った上での暴走だったのかもしれないが、 後で冷静になって流石にマズイと思ったのだろう。 それは、そんなに張り詰めてしまうまで想いをひた隠しにしてきたということでもあるが。 普通は、死にかけてでもいない限り、毎夜こんなことをされていれば幾らなんでも起きるから。 何をどう調達して使ったのかは知らないが、 妹の盛った薬にも耐性のつくことが記してあったか、自分で調べでもしたのかもしれない。 261 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 49 33.04 ID ZqEP/v7T いずれにせよ、妹も不安ではあったようで。 しかし。 その内心も、僕が一言、『そんなことはない』と否定して、それで終わるものだった。 「はっ・・・・・・はっ・・・・・・」 それ用の訓練でも受けた人間相手でもなければ狸寝入りをしたところで、 これだけ触れた上で色々とすれば反応で起きているかは分かる。 反射を抑えるなんて特殊な行為は、僕にはできない。 まして妹は腹芸の出来る性格でもなく、互いに化かし合いをしているのでもなければ、 とうに僕が起きていることに気付いていておかしくない。 なのに気付かない理由は一つ。 僕がそう言ったからだ。 「ああ。アニキの味がする」 つうっ、と。 右腕に触れた舌先が、手首までを滑った。 それから半端に開かれた掌で何度も何度も円を描き、 裏に回って手の甲に乗ると、れろれろとあちこちを走る。 それが終わると今度は先端へと駆け、中央に寄っている指を三本まとめて咥えてから、ゆっくりと吸い立てた。 「汗と、匂い。あんまりしないのが勿体ないな・・・・・・」 唾液を満たした口内でしばらく含み、浸るほどに湿ってから舌に乗せる。 中指から人差し指、最後に薬指という順番で舌先を走らせてから絡ませ、 汚れをこそぎ落とそうと慎重に引いていった。 時折、単にそうしたいのか甘噛みを含ませてから、ようやく解放。 後ろ手に持っていたタオルで余分を拭いて、すぐに小指、親指へと移った。 「アニキ。変に長く風呂に入るようになっちゃったし。体も、すげーよく洗ってるよな」 ちょうど右手が終わったところで。不意に、ぴたりと動きを止めて。 「気付かれてるのかな・・・・・・?」 闇の中で影としか見えない首を傾げ、そしてはっきりと横に振った。 「んなわけないか。起きてないって、アニキが言ったんだし」 そして先程をなぞるように左腕に舌を伸ばし、左手へ。 疑問は完全に処理したとばかりに、作業へ没頭する。 (本当に。怖いくらいだ) それだけのことで、妹の中の問答は終わっていた。 兄がそう言ったから、事実が違うはずはない。 疑念を挟む余地すらなく、不安も悩みも、もしもの可能性すらも、それで全てが終わっている。 正直、どうしてこうまで妹に好かれているのか、理由の分からない好意は恐ろしい。 だけど。 同じく理由の分からない信頼を『家族』から受けて、妹の行為を両親に話したり、 あるいは本人に問いただすことが、僕にはどうしてもできなかった。 妹の口にしたセリフ自体、単なる独り言で、こちらの反応をうかがっているのでもない。 262 名前:妹朝妹晩 ◆lnx8.6adM2 [sage] 投稿日:2012/06/29(金) 00 52 32.42 ID ZqEP/v7T おまけに。 「本当は起きてるなら、起きてるけどアタシには嘘を言った方が、 アニキには都合がいいってことだしな。 許してくれているなら、嬉しいけれど。 何か理由があって、アニキにはその方がいいなら、別にいいさ」 疑わないだけでなく、疑わずに騙されていてもいいとまであっては。 妹の、兄に対するには行き過ぎた行為も、 ほんの少し僕が耐えれば害にはならないと、信じるしかなかった。 妹の行動自体、『兄に頼まれて』初めてしたことで、今のところは夏に限定される。 機会さえあればすぐにでもこうしたい衝動を、妹は今までずっと抱えて、抑え込んできたはずで。 「アタシはアニキのことが好きだから。 アニキがいいなら、それでいいんだ。アタシはアニキの妹だからなっ」 誰にともなく主張して、妹は続ける。 ごそごそと。 ベッドのスプリングを軋ませる移動は、少し下がったところで止まって。 「射精(だ)したら、流石に汚れちまうもんな。 射精す時は、お嫁さんにするもんだし。 あーあ。アタシのも、どうせならアニキに破って欲しいもんだぜ」 兄の股間に吐息を吹いた。 「でもま、我慢我慢。・・・・・・・一生、我慢だぜ。んっ」 そのまま、触れるだけのキスを残して、足の方へと移っていく。 「好きだよ、アニキ」 「せめて夢では聞いて欲しいな」 家の妹の特徴、『兄が好き』。 それは愛より恋で、家族よりも遠くから。 何より問題なのは、万に一つ、いつか自制を越えた妹に来られた場合、 妹の強さとこの狂気に、抵抗できる気がしないこと。 毎朝毎朝、起こされる度のスキンシップと。 毎夜毎夜、眠る度のこの痴態。 僕の夏は────────よく眠れない。
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/251.html
614 妹夢妹夢 sage 2008/01/04(金) 06 05 49 ID hmY/7yYs 落陽の時。 黄昏の中に浮かぶ町並みは斜陽に照らされて赤く溶け、 血のように光りながら夜へと向かって冷えて行く。 夜空には気の早い星が輝き、漆黒の領域を増していく彼方で弱弱しく瞬いていた。 夕闇に覆われていく世界。 刻一刻と宵に近付いていく空間。 そんな中で木霊する叫びが大気を引き裂き、激突する刃の煌きが虚空に散る。 「そこをどけぇぇえええええ!」 「邪魔っ、するなあああああ!」 遥か上空、目を細めて漸く視認が可能となる高高度で殺気が衝突する。 「兄上は渡さん。誰が相手であろうともな!」 「同意。だから兄はワタシが連れて行く」 剣と光、炎と不可視の力。 四人の少女がそれぞれの能力を叩き付け、弾き返し、相殺する。 四種の異能、四つの超常。 炸裂する閃光に目を覆いながら、僕は何故こうなったのかを思い出そうとした。 世界は一つではない。 それが全宇宙という意味でも個人や人類が認識する範囲という意味でも、それは決して唯一ではない。 僕がその事実を学ぶまでには四つの出会いがあった。 四人の妹達に導かれた、四つの世界との出会いが。 始まりは双子の妹である長女、誘宵(いざよい)。 兄妹とは言っても生まれたのはほとんど同時。 いつも艶のある長い黒髪を揺らしながら気さくに話しかけてくる妹が、 壮絶な戦いの中に身を置いていたことを知ったのはいつだっただろうか。 『兄さん。少し聞いて欲しい────────いや、頼みたいことがあるんだ』 ある日。 血の気の失せた、押し潰されそうな不安を浮かべた顔で部屋に入って来た誘宵は、 本当に珍しく長い長い沈黙の後でそう言った。 双子。 同じ時間に同じ母親の子宮の内側で隣り合って育った半身の言葉に、 ただならない気配を感じて頷いた僕を待っていたのが、最初の世界との邂逅。 手を握った長女の全身が輝いたと思った次の瞬間には、僕は涼しい夏の日ような香り漂う草原に立っていた。 そこは『異世界 ニーサン』。 家族の誰にも気付かれないうちに誘宵が召喚された、 剣と魔法、神と悪魔、勇者と魔王、奇蹟と絶望が隣り合う世界。 妹はそんな場所に生贄の英雄、人類を代表して血を流す存在、勇者として召喚されたのだと、後で聞いた。 モンスターを皮切りに、 普段から聡明な妹が異世界の証明を終えた後に切り出したのは、 きっと誰よりも強い勇者の、誰にも言えないささやかな願い事。 『一緒にいて欲しいんだ。兄さんに、私と。 そうすれば、私はもう一度・・・・・・いいや、何度だって戦えるはずだから』 615 妹夢妹夢 sage 2008/01/04(金) 06 09 17 ID hmY/7yYs 莫大な魔力と何らかの犠牲の上にあっちの都合で召喚された誘宵は、ある呪で縛られた。 魔王を倒すこと。そしてその強制的な契約を果たした時には、対価として何らかの報酬がある。 だが。妹は魔王に敗れた、らしい。 現実とは時間の流れが異なる別世界で一年近くも耐え抜いた戦いの果てに、 仲間と挑んだ最終決戦で敗北したのだと言っていた。 それからは戦うことが出来なくなったのだとも。 幸い、機転を利かせた仲間のおかげで死者は出なかったが、妹は剣を握れなくなったという。 ひたすら殺しと死の恐怖の中で抑え続けてきた色々なものが、一気に溢れ出したんだろう。 きっと僕を呼んだのは苦肉の策で、何より苦渋の決断だったはずだ。 『すまない。兄さん。本当に、すまない。 私の都合に巻き込んでしまって。でも・・・嫌なんだ。怖いんだ。 魔王と戦うことよりも、契約を果たせずにこの世界に縛られることが。 兄さんと離れたまま、この世界で一生を終えることの方が、ずっと怖いんだ』 涙ながらの告白だった。勇者の力の源は勇気。それは守る者がいてこそ最大に発揮される。 誘宵が選んだ、一番守りたくて最も失いたくないもの。それが僕。 自分を召喚した賢者に迫られて、特例の下に帰還しての再召喚。 魔法か何かの力で縛られ、逃げ出すことは不可能だったらしい。 まだ大人にもなっていない僕と誘宵。本来ならまだ守られていてしかるべき子供。 姉妹の長女として責任感と愛情の強い妹が、 血を流すのが当たり前の日々で、どれ程の苦痛を経てそれを選択したのか。 気付くことさえ出来なかった半身の戦いの記憶に泣いて、そうして僕は協力を決めた。 魔王との再戦。僕をパーティーの最後尾に置いた妹は自分の身を守ろうともせずに、 一秒でも早く魔王打倒をなそうと吶喊して仲間さえ驚くほどの活躍を見せた。 それから、更にニーサン側でしばらくの月日が過ぎて。 勇者として世界最高の名声を得た妹は、泣き付いた多くの人に頼まれて、 しぶしぶながらたまにはニーサンに来ることを承諾して帰還。 荒れ果てた世界の復興には勇者の名前による素早い統治と結束が必要だから、らしい。 兎に角、魔王を倒した誘宵は僕と共に現実に帰って来た。 そうして、また双子の妹に平穏が戻った────────その、はずだったのに。 「兄さんは私と旅立つんだ。あちらの復興は順調、 無能な王侯貴族も国の荒廃による民衆の不満と勇者の名前のゴリ押しで権益を削った。 今なら教育レベルの低い民衆は魔王消滅の熱狂に包まれた状態で私に味方する。 かつての仲間も、戦闘力の低い僧侶と賢者以外の半数は味方につけた。 武器も力もあり、内政のプランもある。革命は容易い。 あともう一度帰還すれば、私は私の────いや、兄さんのための国を作れる。 文明レベルは如何ともし難いが、この世界より遥かに充実した人生を約束出来るんだ。 私が作り、私が兄さんに捧げる兄さんの、兄さんのための、兄さんを王とする国だ」 銀色に輝く、確かな重量の中にも女性の体の流線を模った鎧。 金の羽根飾りが揺れる兜を奥から誘宵の声が聞こえる。 兜から背中に零れた長い黒髪が、空に線を引いていた。 「そうだな。国で足りなければいずれは世界でも征服しよう。ははは、そうだ。それがいい。 私の愛を示すのに国では不足だ。 あの世界の全ての大地を、大海を、天空を、人民を、私は兄さんに捧げよう。 国土を侵略し、海洋を征服し、天上の神を駆逐し、愚民を洗脳し、私は兄さんを神とする。 世界の全てが兄さんの思いのままだ。戦争でも圧制でもハーレムでも、私は兄さんの全てを許容しよう。 逆らう者は私が殺す。兄さんのために、兄さんと共に戦ったこの剣で私が殺す。 兄さんに逆らった愚物を、兄さんの世界に存在するに値しない汚物を切り払い、 汚れた身を帰ってから王座につく兄さんに慰めてもらうんだ。 どうだ? 理想的な世界じゃないか。私にはそれが出来る。 兄さんに全てを捧げ、兄さんを最も幸せにすることが出来るんだ。 それが理解出来たら────────さっさとそこを退かないかああっ!」 純白の刀身が大気を滑る。ニーサンにいた頃からほとんど視認も出来ない、 勇者にのみ可能な人間を超越した一撃。それがもう一人の妹を、一緒に育った愛すべき家族を襲った。 616 妹夢妹夢 sage 2008/01/04(金) 06 11 02 ID hmY/7yYs 「勝手なことを、言うなあああ!」 虚空に光の軌跡が生まれる。 空間に描かれた淡い輝きの交錯はそれぞれが複雑に絡み合い、重なり合い、 奇怪な紋様を三次元に構成して発光した。 魔法陣。異世界法則の顕現が既存の空間のルールを侵食し、発生した抵抗が神剣の刃を押し留める。 「お兄ちゃんはアタシのものだ! お兄ちゃんはアタシと一緒に魔法の国に行って、ずっと永遠に結ばれるんだからっ!」 妹、次女の古宵(こよい)の指先が空中を走る。 利き手に握られた、ライフルの砲身と槍を融合させたような武器の先端が誘宵に向けられた。 「エクセリオンッ!」 『諾』 三角に近い刃、その中央に埋め込まれた真紅の宝玉に光が灯る。 精霊融合型他律式魔法兵装、『エクセリオン』。彼の承諾と共に金属の表面に回路のような紋様が走り、 伝達された指令と魔力が切っ先へ収束する。 飛行を可能とする三対六枚の光翼を背に、真っ白なマントをたなびかせながら古宵が距離を取った。 刻まれた魔法陣も伴って移動し、明滅、解き放たれる威力の内圧に崩壊して弾け飛ぶ。 「ギャラクティック────────バスタァァアアアー!!」 闇の濃さを増していく空を閃光が蹂躙する。 圧縮された魔力が与えられた指向性に従って前方に広がる空間へ進撃、 異界の化物さえ薙ぎ払う破壊の光線が誘宵に迫った。 次女の古宵が教えてくれたのは、ファンタジーとはまた少し違った魔法の存在。 物質と精神、それぞれの領域を発達させた世界が持つ力。 ただ、文明の発達が弊害を生むのはどこの世界でも同じらしく、 むしろより具体的に精神の力を操れるようになった人間は、 時にその意識だけで世界に大きな影響を及ぼすようになったらしい。 その世界の名前は『魔法世界 ニィチャン』。 翳り始めた精神と科学の進歩にもがくように魔法犯罪が多発し、 また進化した人の意志力から生まれた悪意が実体化する世界。 犯罪者は次元の壁を乗り越えて世界を渡り逃れ、悪意の獣もまた同じく。 世界を単位とする広大な範囲を抑えるには圧倒的な人員の不足を前に、 ニィチャンの世界政府が出した結論は人員の現地調達だった。 何らかの対価を示して、犯罪者の逃げた先々で知性体に武器を与えてを登用する。 そして今、僕のいる世界。 ここでその対象に選ばれたのが妹、古宵だった。 『お兄ちゃん・・・ごめんなさい。ちょっとの間でいいから、ぎゅってして・・・』 ある晩。帰りの遅い妹を心配していた僕をケータイで呼び出した古宵の言葉。 茶色がかった髪を血と、泥と、何か分からない体液染みたもので塗らした頭を僕に預けて、 見たこともない衣装をボロボロにした妹が告げた真実。 他の世界から渡ってくる犯罪者や、悪意が肉を纏った化物の存在。 彼らとの戦いの日々。相棒は一人、武器であるエクセリオンだけ。 彼、ニィチャンの世界で用いられている武器は精神力を魔力と呼ばれるエネルギーに変換する。 特に異世界での使用を前提に作られたシリーズの場合、 未熟な精神で膨大な力を生み出すために使用する精神力、その源となる感情を限定し、 一つに特化することによって強大な出力を得るらしい。妹の場合は、愛情。 誰かから与えられる愛情を実感し、自分も相手にそれを抱くほどにエクセリオンは強力になる。 日々続く魔法犯罪者や異形との連戦に消耗した古宵は、 とうとう自分だけでは魔力の回復が追いつかなくなったのだとエクセリオンに聞かされた。 残された道は愛情を与えてくれ、また古宵側からもそうである相手との触れ合い。 617 妹夢妹夢 sage 2008/01/04(金) 06 12 23 ID hmY/7yYs 『アタシ、頑張るから。お兄ちゃんのいるこの世界を、ちゃんと守って見せるから。 だから・・・・・・たまに、本当にたまにでいいからこうして。お願い・・・』 その日、ふらふらと立ち上がった古宵を場所も知らない戦場に送り出してからも、 僕は幾度となく妹を抱き締めて夜を過ごした。 日増しに強力になって行く相手との戦いに身を投じる妹が、愛する家族がせめて少しでも楽になるように。 そうして、戦って戦って戦い抜いた妹が、 それなりの平穏をこの世界に齎したのも少し前のことだ。 激戦の対価に古宵が何を願ったのかは僕も知らない。 だが、血を流す戦場に臨むことを代償としたそれは、大切で譲れないものだったのだろう。 「ぉ、おぉおぉおぉおぉおぉおぉおおぉおおおおお!!」 収束された光の渦が過ぎ去った後、そこには鎧を発光させている誘宵がいた。 白煙を上げながらも剣を構えている。 伝説の武具の一つである勇者専用の鎧に施された加護と本来の防御力。 そこに防御魔法を上乗せしただろう。 顔の輪郭だけを覆い、表情の部分は露出している兜から覗く口が強く結ばれた。 「今のを耐え切るなんて・・・・・・でもそれなら!」 古宵の、抱き締めている時に僕の背中に弱弱しく当てられていた細い指が空中に踊る。 描かれた魔法陣はエクセリオンの機能を以て増幅され、 古宵を中心に回転しながら拡大した。 「やってくれたな!」 誘宵が剣を上段で固定した。 爆発のような光が全身────いや、身に着けた武具から放たれる。 一度だけ見たことがあった。魔王を消滅させた技。 神の力と人の技術を合わせた伝説の武具を共鳴させ、 全開にした力を刀身の形にして射出する必殺の一撃。 「これで終わりだよ」 「私と兄さんの恋路を邪魔する者は殺す。それがたとえ魔王だろうと、妹だろうとな!」 展開された魔法陣が爆縮、エクセリオンの切っ先で極小の球体となった。 内部に留め切れない魔力の奔流が紫電となって空間に荒れ狂い、閃光の花が咲く。 対するのは、巨人が振るうかのような光の帯。 刃の形状に凝集された光の力が切っ先から伸び、逃れる者、立ち向かう者、 全てを断ち切らんとして開放を待つ。 「うるさい! 私はお兄ちゃんと魔法の国に行って、そこで永遠の命をもらってずっと幸せに暮らすんだから! 邪魔をするなら、たとえお姉ちゃんでも殺してやる! 塵になれ────────アルティメットバスタァァアアアアアアアアアア!!」 「お前がなあっ! 聖剣一刀、討魔伏滅!!」 光同士が激突する。 目を焼く発光と耳を震わせる衝撃。 その、ほんの少し横にも似た光景があった。 618 妹夢妹夢 sage 2008/01/04(金) 06 14 08 ID hmY/7yYs 三女、火宵(かよい)。 彼女が教えてくれたのはこの世界にある、だけど多くの人間が忘れてしまった世界のこと。 妖怪という存在。 火宵は僕の妹であると同時に、遥か昔に生まれ、そして死んだ人外の者でもある。 『兄上よ、ゆめゆめ忘れるでないぞ。人は唯一ではない。 人の堕落が続き、文明が滅びへ近付いた後に再生を迎えるならば、その過程で我らは再び生まれよう』 火宵の正体は七本の尻尾を持った化け狐。つまりは妖狐だ。 狐火と幻術を得意とし、機嫌の悪い時はよく僕を化かそうとする。 もっとも、今の火宵は体の面では完全に人間。昔、ちょっとした悪さをして滅ぼされた火宵は、 その直前に転生の術というものを使ったらしい。 だがその代償は大きく、力も削がれ、転生先は選べない。 虫や微生物にでも転生すれば終わりだ。 だから使う者は滅多になく、更には転生先で生き残れる確立は天文学的低さだという。 『耐えられぬ。この身の何と弱きことよ。 初めから弱き者に生まれたならば良かったものを、今の我の何と不完全なことか』 火宵は一般的には奇妙極まりない子供で、まだ僕に正体を明かす前はよくそんなことを口にしていた。 転生した火宵の力は以前の半分を下回っていたというから、分からなくはない。 当時、まだ大人というには遠かった僕は妹の言葉に首を傾げつつも、 じゃあ今の状態で出来ることを楽しもうよと、 それはもうあっちこっちで色々なことを火宵としたものだった。 幸運にも、と言うべきか、僕の行動で妹の苦悩は減ったらしかったけれど。 『兄上は我にとっての色よな。 自らの苦悩と嘆きで色褪せていたこの世界で取り戻せたもの、生まれたもの。 からーてれびを見慣れた者は、もうものくろの画面には耐えられまい。 兄よ・・・・・・頼む。兄はどこにも行くな。 この色づき始めた世界の中で、いつまでも我の傍にいておくれ』 そう言った日のうちに、火宵は正体を明かした。ただし、僕だけに。 今の時代にも力を持つ者はいるから、出来るだけ正体は隠しておきたいんだとか。 僕と妹がたまに、一緒にテレビを見ながら狐うどんをすするようになったのはそれからだ。 「うすうす感じてはおった。 お前が他の姉妹と違って、そも我のように人でない存在であったことはな。 それでも黙っておれば見逃してやったものを・・・・・・兄の魂をこの星より連れ去るなど、 断じて罷りならん! 諦めぬと言うならば、その身を未練さえ残らぬよう焼き尽くしてくれる!」 「不許可。兄の周囲にアナタ達のような存在がいるのは危険。 兄のためにも、兄の精神はワタシの母星に連れて行く。邪魔しないで」 「化生の類でさえない人外が、どの口でほざくかあっ!」 火宵が、まるで尻尾のように広がった七つのポニーテールを背後の炎で赤々と照らしながら吼えた。 「狐火っ!」 火球が七つ、後部から爆炎を振りまいて高速で放たれる。 対する四女、真宵(まよい)は軽く手を掲げた。 「#△@Ω■δ?Λ」 耳鳴りのような声が響く。 意味を認識出来ない音声の羅列が紡がれ、世界そのものへの呼びかけが行われた。 見た目には何の変化もない。 にも拘らず、飛来した火炎は全てがまるで不可視の壁がそびえ立ったように虚空で弾け、溶け消えた。 多分、僕が姉妹中でも最も理解出来ていない真宵の力によるものだろう。 619 妹夢妹夢 sage 2008/01/04(金) 06 15 35 ID hmY/7yYs 四女の真宵は、厳密にはこの星で生まれた生命体じゃない。 光年単位でさえ気が遠くなるような彼方、異星『アーニィ』で生まれた精神生物だ。 アーニィで生まれた生物は、何か波動とかそういうもので構成された存在で肉体は持たない。 そんな彼らはどうやってか物質文明が発達し、肉を纏った生物がいる星である地球のことを知覚した。 自分達にない特性を持つ他者。 その調査のために送り込まれてきたのが真宵、らしい。 『ワタシは地球上の生物、特にその中において支配的生命体である人類の観測のために、 まだワタシの侵入に抵抗する精神を持たない胎児の状態であるこの体に入り込んで産まれた。 人類が保持及び発生させる情報を人類の視点から認識し、 それを母星へと伝達することがワタシに課せられた使命』 火宵もそうだが、真宵は真宵で変わった妹だった。 情動というものを感じさせず、なのに冷めているという表現とはまた違った印象を受ける。 子供の頃から小さな手で本のカバーを握っては、情報収集と言って読み耽っていた。 視力が低下して眼鏡をかけるように言われた時に、『不覚』と言っていたのはいつの頃だっただろうか。 『だが、困ったことがある。 高度に理性を発達させた知的生命体にとって、 未だ原始からの過渡期にある人類の精神的な揺らぎは余りにも刺激が強い。 それは禁酒を守り続けた人間が、ある日いきなりウォッカをそのままあおるようなもの。 忘れ去られたはずの生々しい感情を、 ワタシはこの肉体の脳の働きによって強制的に体験させられている状態。制御が出来ない。 このままでは抑えきれなくなったエラーの蓄積が臨界を越え、 本来の存在としてのワタシにとって深刻な事態が発生する』 先ずは僕を納得させるためにスプーンをマッガーレしたり、 ソファを浮かせたりして見せた真宵はそう言って、 感情を映さない、だけど僕や姉妹にはほんの少しだけ表情の分かる顔で迫った。 『エラーの原因となる感情の対象の抹消、 または感情の充足か他の代替行為による緩和が必要。ワタシにとっては緊急事態。 兄には協力して欲しい。断られた場合、ワタシには消滅する以外の選択肢がなくなる』 この妹は感情こそ読み難いけど、その代わりと言うかのように言葉を飾ったりはしない。 思っていることをそのままに伝え、決して嘘はつかない。 そんな真宵を見て来たから、言っていることは理解出来なくても、 僕の妹が苦しんでいて助けを求めているのは分かった。 『原因の一つには孤独がある。構って欲しい相手に構ってもらえないこと。 想っている相手が想いに応えてくれないこと。 この星にワタシの仲間はいない。ワタシという種はこの地上で孤独。慰めが必要。 兄の愛情を感じさせて欲しい』 まあ、緊急事態なんて言った割には、求められたのは添い寝することだけで拍子抜けしたのだけれど。 それでも、寂しさに僕の寝巻をそっと掴んでくる真宵を拒絶する気にはなれなかった。 それなりに大変な思いもしたけれど、 可愛い妹達と過ごす平穏な日々は本当に幸せで充実していたと思う。 勇者でも魔法使いでも妖怪でも異星人でも、全員が僕の妹には違いないのだから。 620 妹夢妹夢 sage 2008/01/04(金) 06 16 28 ID hmY/7yYs なのに、どうしてこうなってしまったのだろう。 勇者でもなければ魔法使いも妖怪でも異星人でもない、 伝説の武具や魔法や妖術や不可思議な力で空を飛ぶことも出来ない僕。 上空で戦う、殺し合う妹達は遠くて、止めるどころか声を届かせることさえ出来ない。 原因は一体なんだったのだろうか。 今日、帰宅すると家の中が静まり返っていて、 テーブルを囲んで妹達がお互いを睨み合っていて。 唐突に妹の中で誰を一番愛しているかを聞かれた僕が答えに窮していると、 全員が自分に決まっていると主張して。 多分、そこから本当におかしくなった。 切欠は分からないけど、妹達はお互いがそれぞれ特殊な環境にあることに気付いたのだろう。 おそらくは最近に。 呆けた僕をよそに言い争いを続ける妹達の目は、それまで見たこともない殺意に満ちていたから。 まるで自分と相手が、剣を持って相対しているみたいに。 それからすぐに自分の長所を挙げるのが相手の短所を貶すことに変わって、手が付けられなくなった。 言い争いが罵倒になり、やがて掴みあいになって。 僕が止めに入ると、恐ろしい殺気とその奥にある何かどろどろしたものに見詰められて。 腰を抜かした僕に、外でやろうと誰かが言い出して。 それからは、本当に掛け値なしの殺し合いだった。 「っ────────幻!?」 視認を越えた速度で駆けた真宵が、輝きを纏った腕で何もない虚空を貫いた。 「うつけが!」 その残像を撫でながら迫る、火宵の投げつけた爆炎の塊。 炎熱の鉄槌は真宵を飲み込むと膨れ上がって炸裂した。 瞳を真紅に染めた火宵がその先を見据え、かと思うと背後を振り返る。 「外れ」 「がっ!? く・・・この、おのれええ!」 振り返った火宵のすぐ後ろに滲むように真宵の姿が現れたかと思うと、 咄嗟に上げられた腕ごと姉を蹴り飛ばした。 ボールみたいな速度で吹き飛ばされる火宵を追おうとして、 火宵の怒号と共に体から放たれた熱波に足を止める。 また高速で何かを呟くと、不可視の壁が赤色の侵食を遮った。 「我の兄上に手を出そうとしたばかりか、肌に傷を・・・・・・万死に値するぞ! 妹の分際で調子に乗りおって!」 「見解に相違がある。第一に姉に口出しされるいわれはない。 第二にその傷は姉自身が弱い証拠。調子に乗って力量を測り損ねたのはそっち」 拳を握った火宵が肩を震わせながら顔を伏せる。 真宵はしてやったりと言わんばかりに薄く笑んだ。 それに気配で反応したのか、火宵が顔を上げる。 621 妹夢妹夢 sage 2008/01/04(金) 06 40 49 ID hmY/7yYs 「カアッ!」 見間違いでなければ、見開かれた目、瞳には縦に線が入っていた。 真宵に向けた視線と共に気合が迸った瞬間、真宵の姿が炎に包まれる。 「────────!?」 「はははははっ! 小娘の分際で図に乗るからそうなる! 衰えても我は七つ尾の大妖、並の人外に遅れなど取らぬわ!」 哄笑が暗くなった空に響く。 今度は真宵の瞬間移動も見られなかった。 代わりに、燃え盛る炎が収束していく。 「・・・・・・何?」 「再構成完了」 消え去った炎の中から現れたのは、火傷どころか服に焦げ目さえない真宵。 着ていた学生服は皺一つない状態で肌を包んでいる。 眼鏡の奥の瞳が、嘲りを示して細くなった。 「この程度・・・? なら、やはり兄にはワタシが相応しい。 他人を小娘呼ばわりする年増は引っ込んでいて」 「────────なめおって。そちらこそ侮るでないわ!」 大気が鳴動する。 火宵の背で劫火が燃え猛り、朱色の花弁を空へと散らせた。 火の粉が夜風に乗って流れ、七つのポニーテールが揺らめくように広がる。 陽炎に歪む顔で火宵が妹を睨み付けた。 「一瞬で塵と化せば戯言をぬかす口も元には戻るまい。覚悟せよ。 兄上はこの星で我と暮らすと決まっておる」 「否定。それは姉の意思。兄の意思ではない。そして兄はワタシを選ぶ」 焼けそうな熱を孕んだ視線が交わされる。 数瞬の沈黙を経て劫火の花が咲き、不可視の力が空間を打ち据えた。 炸裂する閃光の最中、視界にもう一つの光が映る。 622 妹夢妹夢 sage 2008/01/04(金) 06 41 20 ID hmY/7yYs 「エクセリォォオオオオン!」 『諾!』 「神剣よ! 私に力を!」 大技を繰り出し、相殺し、硬直を解いた誘宵と古宵が距離を取る。 古宵が兵装に呼びかけ、夜空に砲身の輝きを掲げるとその周囲に光点が発生、 虚空から生じた光の粒が複数の座標に渦を巻いて球体を形成していく。 対する誘宵が剣を天へ突き立てると、身に纏う武具達が応えて発光した。 勇者の感情に呼応して奇蹟の力が巻き起こり、凝固したような光が誘宵の周囲に滞空する。 「リリカルラジカル! くたばれ! シューティングスター!」 「聖剣一突!」 野球ボール大の光球が一群となって進撃する。 古宵を起点に直進するもの、左右から迫るもの、上下から挟み打つもの、 軌跡に残光を生じさせる速度で襲い掛かる次女の魔法に、長女は剣で前方の空間を突いた。 円状に漂っていた光帯が与えられた指向性に従い、濁流と化して突進する。 せめぎ合う閃光の弾雨と奔流。 「お兄ちゃんはアタシをずっと助けてくれた! それもお兄ちゃん自身の意思で! 勝手に異世界に行った挙句に勝てなくてお兄ちゃんを巻き込んだ無能が、 長女面してお兄ちゃんに近付くんじゃないっ!!」 「たかが人間やケダモノ相手にひいひい泣いていた弱者に言われたくはないな! お前程度の魔法使いなら向こうにもいたぞ? 魔王には勝てなかったがな! 私と兄さんは双子。同時に生まれて同時に死ぬ、運命に結ばれた二人なのだ! 誕生も命がけの戦場も共にした私と兄さんの間を、妹の分際で邪魔するんじゃないっ!」 拮抗を崩そうと古宵は次々と光弾を生み出し、誘宵は全身に纏う光を強めて放ち続ける。 弾丸の一つ一つは人間の頭を粉砕でき、光流は全身の骨を粉々に出来る威力だ。 それを本気でぶつけ合う。相手に向けて。勝つために。実の姉妹を殺して勝利するために。 誰も彼もが瞳の中で笑っていた。 勝つのは自分だと確信して、相手を殺すのは自分なのだと確定しているみたいに。 ほんの少しだって、躊躇していない。 戦っているのは血を分けた姉妹で、これまで一緒に過ごしてきた家族なのに。 まるで迷いがない。 それどころか楽しんでる。戦って戦って戦って、相手を殺せる威力をお互いにぶつけ合って。 そうするだけ自分の望むものに近付いていくように。 僕のことを口にしながら、他の姉妹を殺そうとしている。 「はは・・・」 今、僕は笑ったのだろうか。 端から星の輝きが失われていく視界の中で、ふとそんなことを思った。 もう見たくない。聞きたくない。 声に出そうとして、何故か唇が動かないことに気が付く。 感覚が断線していた。痺れたような感じがぴりぴりと肌の上を這い回って睡眠を促してくる。 逆らう理由はない。僕は、視界が真っ暗になる前に自分から目を閉じた。 新年早々の悪夢が、きっと正夢ではない初夢であることを願って。 次は良くなくてもいいから悪夢だけは見ないといいな。 そうして、目が覚めたら妹達に言うんだ。 明けましておめでとうって。
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妹「野球的な何か」 野球をやってる俺と妹と、家族のお話。 妹「野球的な何か」1 妹「野球的な何か」2 妹「野球的な何か」3 登場人物紹介 ネタバレ気にならない程度に ●家族 「俺」 大学生、年齢22歳。 元高校球児、ある怪我で現役を退いてからは大学でモラトリアムを謳歌する様に。 卒論が終わらないらしい。 「妹」 中学生、年齢14歳。10歳頃から野球を始める。お兄ちゃん大好き元気娘。 ポジション投手兼外野手。右投げサイドハンド両打ちと器用な面を見せるがパワー不足は否めない。 「姉」 銀行員、年齢にz(ry オシャレに命を掛けるが野球の事はまったくわからない、だが野球が嫌いというわけではないらしい。 ある筋の情報によると彼氏が野球好きという事だ。 「父」 元プロ野球選手、50歳前後。 一軍登録の経験は無く、引退するまで二軍で捕手を務める。 温厚で面倒見の良い性格で引退後も後輩からは慕われ、先輩からは色々と面倒を見られているらしい。 「母」 かーさん。 謎。 プロテインをよく買ってくる。 ●野球チーム 「少年」 妹の事が好きで告白するも断られる。 ならばと俺に勝負をもち掛けるが……? ●バッティングセンター 「店員」 エロゲが好きな定員さん。
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口蹄疫とは? 口蹄疫とは、偶蹄類などの動物に関する伝染病。 人間には感染しない。 症状として、口周囲や蹄部に水疱が形成される事があげられる。 伝播力が強い事、感染速度が速い事が主な特徴。 ひとたび、感染例があげられると、広範囲に広がる危険性がある。 動衛研:口蹄疫(Foot-and-mouth disease)関連情報 主な感染例(時系列順) 1908年 日本の東京都、神奈川県、兵庫県、新潟県で552頭が感染。 1908年に、東京、神奈川、兵庫、新潟で522頭の感染が記録されている。(wikipediaより) 19??年 ドイツ 5年間で370万頭感染した 2000年 日本 2000年3月25日から4月9日に宮崎県で3戸、5月11日に北海道1戸の感染が確認、6月9日には終息。日本では92年ぶりの発生となった。(wikipediaより) 韓国 坡州市の牛から発見され、全国的にイベントの中止などの措置が取られるなどの影響が出た。(wikipediaより) 2002年 韓国 FIFAワールドカップを控えた2002年5月2日から同年6月23日までに京畿道や忠清北道の都市で16件の発生が確認された。この時点で約16万頭の牛が殺処分された。 (wikipediaより) 2001年 イギリスおよびアイルランド 2001年にイギリスで約2000件の感染が確認された。約700万頭の羊と牛が食肉処理された他、マン島で行われる予定の陸軍主催のハイキング(en Ten Tors)の中止、2001年イギリス総選挙の1ヶ月延期などの影響が出た。一方農民の消毒やイベント参加への自粛など、政府の厳格な対応によって被害は最小限に食い止められ、隣国アイルランドでは1件の感染が報告されただけに留まった。(wikipediaより) 2007年 イギリス、イングランド 2007年8月3日にイングランドの農場で再び感染が確認されたとイギリス環境食糧農林省(DEFRA)が発表した。政府は家畜の移動を全面禁止し、EUはイギリスからの家畜の輸入を禁止した。(wikipediaより) 2010年 韓国 4月22日。韓国で感染確認 4月20日。日本・宮崎県で感染疑いの牛が発生。22日に、感染確定。 5月4日。 17例目まで確認。 現在対策中